2012-01-01から1年間の記事一覧

「君主論」 マキアヴェリ 池田 廉 訳 (2002) 中央公論新社

さて君主は、戦いと軍事上の制度や訓練のこと以外に、いかなる目的も、いかなる関心事も持ってはいけないし、またほかの職務に励んでもいけない。つまり、このことが、為政者がほんらいたずさわる唯一の職責である。(十四 軍備についての、君主の責務 p-86…

「若者を殺すのは誰か?」 城 繁幸 (2012) 扶桑社新書

新成人の数は2012年で122万人とさらに落ち込んでいるから、この先、新人はさらにバカになり、国内市場はさらに縮小するだろう。そういった構造にメスを入れることなく、ただ「最近の若者はバカになった」で片付けようとする中高年を見ると、つくづく日本人も…

「ウイスキーシンフォニー 琥珀色への誘ない 増補改訂版」 嶋谷幸雄 (2003) たる出版

我が家の正月酒はウイスキーが中心である。入社直後のワインを仕事としていた時代はワインが中心であった。酒の内容は変わったが「ハレ」の日に神に豊作を祈り、神と酔いを共有した昔の人と精神は少しも変わっていないと思っている。酒造りを職としてきた人…

「カウンターの中から見えた「出世酒」の法則 仕事が出来る男は、なぜマティーニでなくダイキリを頼むか」 古澤 孝之 (2012) (講談社プラスアルファ新書)

私はバーテンダーとして、最後の一杯をお出し出来たことを、本当にうれしく思っています。その方の素晴らしい人生に関わり、次の人生へ送り出す一杯をお出しすることが出来て、バーテンダー冥利につきるというものです。この仕事をしていなければ、遭遇でき…

「走る哲学」 為末 大 (2012) 扶桑社新書

義務は無邪気には勝てず、努力は夢中に勝てない。やりたいからやってるんだい、やりたくなかったらやんないやい、という自分の中の子どもの部分を否定せず、ここはちょっと頑張ろうね、でも明日は遊ぼうね、と大事に育てる事。心の子どもを叱りすぎて黙らせ…

「ウイスキーの科学」 古賀邦正 (2009) 講談社

「飲酒は二十歳を過ぎてから」というまでもなく、エタノールの味もまた、“大人の味”だ。面白いことに、基本味として認知されていない「辛み」「渋み」「アルコールの味」はいずれも“大人の味”であり、痛覚などの侵害受容器を介して知覚される「痛み」を伴う…

「知る悲しみ やっぱり男は死ぬまでロマンチックな愚か者」島地勝彦 (2011) 講談社

しかもわたしは「じつはおれはガンなんだ」と思わずいうところだった。その一言はぐっと我慢した。そのあとわたしはベッドのなかで悔やんだ。「なんであいつにハンディくれなんていったんだろう。おれのダンディズムが許さない。シバレン先生、ごめんなさい…

「幸福な食堂車 九州新幹線のデザイナー 水戸岡鋭治の「気」と「志」」 一志 治夫 (2012) プレジデント社

つまりは、頼んでくる人がいるかどうかがすべてであって、仕事というのは、人との出会いしかないわけです。仕事で一番大事なのは、どういう人と出会うか、それしかないんです。そのために切磋琢磨して、素晴らしい人に出会ったときに、その人がいいねと言っ…

「茶の世界史 緑茶の文化と紅茶の社会」 角山 栄 (1980) 中公新書

こうして紅茶文化は十八世紀の重商主義時代を生み出したばかりでなく、重商主義時代の典型的文化として形成されることになるのである。だからそれは本質的に一種の帝国主義ともいうべき外向的性格、つまり植民地支配を志向した攻撃的侵略的性格をもつように…

「最新 地域再生マニュアル」 山浦 晴男 (2010) 朝日新聞出版

地域づくりを支援するようになってみえてきたことの一つは、地域がその気になって旗をあげて取り組み出せば、関係者やそれ以外の外の人たちまでが応援する動きが出てくる、ということである。逆にいえば、自らは何もせず外の手助けをまつ地域は、そのまま没…

「ローマ法王に米を食べさせた男」 高野誠鮮 (2012) 講談社

やってきたことが間違っていたんです。判断の誤りの連続だったわけです。だから何十年やってても改善できなかったんです。それで長い間、間違った判断を下してきた人たちに稟議書を出して、もう一回伺いをたてるのはおかしいと思ったんです。しかも稟議書を…

「美しき日本の残像」 アレックス・カー (2000 単行本は1993) 朝日文庫

遺跡を見ることによって各時代の主流になった思想が分かります。例えば、奈良時代には密教寺院、中世には禅寺、明治時代には汽車の駅が大きなモニュメントとして目立ちます。そして、現代はどうなってゆくでしょう?ヨーロッパや東南アジアの田舎を回ると村…

「モロッコ革の本」 栃折 久美子 (1991) ちくま文庫

amazon 四十六年。四十六年間、毎日毎日同じことのくり返しだ。一日に二リットルの牛乳を飲み……これは銅の毒にやられないためなんだそうだが、他のものは食べたくないと言ってね。私のこの銘の金版を彫った男だ。人間はそんなふうにして生きているよ。どこの…

「どうする? 日本企業」 三品和広 (2011) 東洋経済新報社

成長は結果として実現するもので、目標は、「事業活動を通して世の中にもたらす変化」という言語で語るべきです。そもそも資本主義は社会に貢献する企業に対して利益という報償を出す制度であり、極論すれば、企業に期待される社会貢献は二種類しかありませ…

「ほんものの日本人」 清野由美 藤森 武 (2007) 日経BP社

「やるからにはパーフェクトゲームをやってやる」という秘めた気迫は後に、アカデミー賞という人生の大転換に結実したが、その記念碑であるオスカー像にしても「どこかの棚に放り込んであって、見ることもないわね」。淡々としている、というよりも超越的な…

「高校生レストラン、行列の理由」 村林 新吾 (2010) 伊勢新聞社

私は、確かに実践教育を重視してはいますが、経験さえすればいいと考えているわけではありません。もし経験がすべてなら、学校なんてそれこそ不要でしょう。しかし、「なぜそうした調理の仕方をするのか」「その料理はどんな歴史があるのか」などの知識を学…

「ニッポンの風景をつくりなおせ 一次産業×デザイン=風景」 梅原 真 (2010) 羽鳥書店

いちばん森が多い国=高知 (84(はちよん) p-223) 高知はひとつの「国」である、という考え方が大事なんだろうと思う。お上ありき、大都市ありき、ではなくて、それらと互角に渡り合う「独立国としてやっていく」という気概。ローカルのポテンシャルにう…

「自分の仕事をつくる」 西村佳哲 (2009 初版本は2003) ちくま文庫

仕事を通じて、自分を証明する必要はない。というか、それはしてはいけないことだ。(あとがき p-274) ここで取り上げられた人々は、実物で試行錯誤する(わたしたちは得てして頭の中だけで考え、錯誤だけしてしまう)、体験して感じ取った何かを大切にする…

「日本のデザイン 美意識がつくる未来」 原 研哉 (2011) 岩波新書

よくできたデザインは、精度のいいボールのようなものである。精度の高いボールが宇宙の原理を表象するように、優れたデザインは人の行為の普遍性を表象している。デザインが単なるスタイリングではないといわれるゆえんは、球が丸くないと球技が上達しない…

「アグリ・コミュニティビジネス 農山村力×交流力でつむぐ幸せな社会」 大和田順子 (2011) 学芸出版社

ただし、単にブランドとか、付加価値を付けて大都市で高く売るという発想では、従来の消費偏重社会のビジネスと何ら変わらないと思う。生産者、消費者、地域住民、NPO、研究者、自治体などが連携し、多様な生きものが育まれる農地や環境をともにつくり、地域…

「ジーノの家 イタリア10景」 内田洋子 (2011) 文藝春秋

ふと、心づけのコーヒーはありますか、と聞いてみる。/「ありますよ、お待ちしておりました」/バールマンはそう言って微笑み、奥の棚から淡いピンクの花柄の、あのコーヒーカップを出してきた。そして、コーヒーカップの脇に真新しいマルボロライトをひと…

「地域再生の罠」 久繁哲之介 (2010) ちくま新書

もともとスローフード発祥の地イタリアでは、スローフードの<本質>は、家族や友人など身近にいる大切な人と余計な気と金を使わず、ゆっくりと楽しい時間を過ごすことにある。つまり、スローフードの本質は「大切な人との交流」という一点に尽きる。(第3章…

「田舎力 ヒト・夢・カネが集まる5つの法則」 金丸弘美 (2009) NHK出版

こういった新しい地域は、自らの力でネットワークを構築し、互いに知恵とアイデアを交換しながら、ますます発展していく。インターネット技術は、消費者との直売ルート開拓や広報ツールとしてだけでなく、知恵ある生産者同士の情報交換にも大いに貢献してい…

「セーラが町にやってきた」 清野由美 (2009 単行本は2002)日経ビジネス文庫

それを考えると、会社に『存在感』という付加価値を与え、それを高めていくこと、という新しい基準に行き着くんです。『あの会社があると世の中が明るくなる』『楽しくなる』。表現は簡単ですが、人々にそう思われ、語られることが、二十一世紀には、企業の…

「地域の力−食・農・まちづくり」 大江正章 (2008) 岩波新書

「緑と農の体験塾」のある利用者が一年間にわたって、採れた野菜の重さを正確に計り、近くのスーパーでの価格と換算してみた。それによると、中玉トマト九四三二円、キュウリ七七〇一円、里芋六五六三円など、合計九二一一三円である。加藤によれば、この人…

「コミュニティデザイン 人がつながるしくみをつくる」 山崎 亮 (2011) 学芸出版社

社会的な課題に対してデザインは何が可能なのか。漠然と考えていたテーマが、このとき明確になった。デザインはデコレーションではない。お洒落に飾り立てることがデザインなのではなく、課題の本質を掴み、それを美しく解決することこそがデザインなのであ…

「経営戦略を問い直す」 三品和広 (2006) ちくま新書

まずはキャラクター。結論を先に述べると、こちらは簡単に見えないと思います。人に見られていると知りながら、非論理的、または非道徳的な言動を見せる人は、そうそういるものではないからです。キャラクターを見抜くには、様々な局面における日常の観察、…

「ざらざら」 川上弘美 (2011 単行本は2006) 新潮文庫

きっと明日も会社に行って、お昼にはパスタかカレーか焼き魚定食を食べて、夜お風呂に入った後にはマニキュアを塗りなおして、友達にちょっと電話をして、でもふられたことはまだ話さないで、かわりに今シーズンのバーゲンの話か何かして、電話を終えてから…

「オリガ・モリゾヴナの反語法」 米原万里 (2005 単行本は2002) 集英社文庫

そもそもオリガ・モリゾヴナは、実在した先生ですから。ソビエト当局が「彼女を解雇しろ」と校長に命令したのに対して、先生たちが、彼女が素晴らしい教師で、彼女を失うことはいかに大きな損失かという、電文にしてはあまりにも長すぎる嘆願文を書いた。そ…

「シモネッタのデカメロン」田丸公美子 (2008 単行本は2005) 文春文庫

もちろん失意の彼女は彼の出張中に退社してしまった。結局美人で有能な秘書を失うことになった彼は、今も自分の決断の是非を悩んでいるらしい。(かくもユニークな人たち 堅物愛妻家 p-163) たしか島地勝彦氏が福原義春氏から薦められたと書いていたのだけ…