「日本料理の歴史」 熊倉功夫 (2007) 吉川弘文館

日本料理の歴史 (歴史文化ライブラリー)
その主張するところは『典座教訓』と同じで、食べ物をつくることが「行」であるように、食べることも「行」である、としている。巻頭の一節に「法はこれ食、食はこれ法なり」と述べた点にすべてがある。日本の食事文化のなかに、どこか精神論がいつもひそんでいるのは、こうした禅の清規の影響ともいえよう。逆にいうと、日本人の心性には、喫茶であれ食事であれ、単に味わいの精美を追究するのにとどまらず、人間の生き方と呼応させ「道」に高めようという向きがあることが、こうした清規の厳格な調理論や食事作法論を生んだといえるかもしれない。(精進料理とは何か p-65)
歴史シリーズだが、これも常識を再点検する上で興味深い。公家や武家の料理が食べるものからだんだん見せるものになっていったのを、禅や茶の湯の世界から「待った」がかかって、いまの日本料理につながる、という感じ。それらのミニマリズムとか、ラディカルさといったものは、とてもモダンな感じがするし、諸外国から尊敬される日本文化の精髄なんだなぁ、ということがよく分かる。しばらく勉強のために読書から遠ざかっている(どんどん書架に未読の本がたまっていく)が、著名な日本料理屋へ行くのに下調べ。(2013/03/10読了)