2009-01-01から1年間の記事一覧
一言でいうと実もふたもないことになってしまうが、つまりこれはあらゆる時代の観念や思想に否応なく相互連関性を与え、すべての思想的立場がそれとの関係で―否定を通じてでも―自己を歴史的に位置づけるような中核あるいは座標軸に当る思想的伝統はわが国に…
音楽家の日常の姿は、その人の音楽を反映するものだと思う。たとえば、私の見かけた、若き日のエリアフ・インバルは、食堂の人目につくテーブルで、お膳の前にフル・スコアを立て、肉を頬ばりながらページを捲っている、いささか怪しげな人物だった。チャー…
そうした状況がほぼ確定し、小沢開作が大きな幻滅に包まれていた三十五年、征爾は生まれた。父がその名前に託したものはもはや明白だろう。板垣と石原の力を借りてこそ産まれるはずだった「調和」の楽園、理想の満州国は死産に終わった。開作はその理想の力…
「人間力」と自分で読んでいたけれども、自分が関わることによって不思議なことが起こってくることには、相当な信頼と自信を持っていた。そしてそれは何よりも、何もしないことが、同時に激しさを秘めていることにも関係しているように感じられる。あまり表…
この長年のお手盛り人事が大学、学問の沈滞を招いてきた。しかも給与は国立私立を問わず、全国どこの大学に行ってもたいして変わらない。優れた研究成果を上げた教授もそうでない教授も、優遇もなければ制裁もない。これほどの悪平等はいったいいつまで許さ…
これに対して武谷先生は、次のように言われた。「科学者には科学者の役割があり、(住民)運動には運動の果たすべき役割がある。君、時計をかな槌代りにしたら壊れるだけで、時計にもかな槌にもなりはしないよ」(第7章 専門家と市民のはざまで p-164) いわ…
ヘリコプターの中で若い二人は携帯電話で自宅に連絡していたという。篠原氏は「今日は帰れないので子どもを病院に連れて行けない」と話し、大内氏も実家に預けている子どもを迎えに行けなくなったと話していた。(第4章 崩壊したJCOの安全管理体制 p-206) …
そう考えた私は、理由を挙げて「出力調整は技術的に不安なことではない」と社説に書いたところ、山のような投書と全国から非難の電話が二日間殺到した。投書には同じ文面のものがかなりあった。どこからか指令が出て書いたように思える。(第1章 原子力報道…
筆者が言いたいのは、原発側と住民の信頼関係が確立しない限り、原発問題は容易に解決しないということである。そのためには、一般市民ももっと原子力の知識を深める必要があると思う。この本の趣旨はそこにある。(序章 原爆も原発も基本原理は同じだ p-17)…
つまり、本来であれば、他の先進国と同じように、合理的・科学的に生徒一人当たりの単価費用を計算し、それに応じて生徒数を乗じて、教育費の計算と配分が行われなければならないと考えられていた。ところが、それが許されない厳しい財政事情のもとで、現状…
だが今やっと学生たちの中に、よい授業を受ける権利を主張する層が生まれてきたように思う。(4)の加奈は、「〈大学生なんだから自分たちでやれ〉と言ってほっておく、あまりにも教育の形をなしてないです。学生をただ〈泳がせておく〉のはやめてほしい」と語…
日本の大学院の場合、最初の数年は一般的に広く学ぶというスタイルを取らない、基礎訓練が薄い、社会科学では原典重視をしない傾向が強い。また歴史や哲学も、通史を書いたり、哲学史を若い人にレクチャーしたり、そして随所で古典を読むというような授業が…
やりたい仕事は先に膨らました方が勝ちで、忙しくなるのを嫌って仕事をあまり膨らまさないでいると、逆に、みんながやりたがらない仕事が回ってくる可能性がある。このように、先手先手で自分のやりたい方向に仕事を膨らませてしまう方法は、キャリアの達人…
「アマはいつでもあなたと一緒に仕事をしていると思って、励むように。アマより貧しい、不幸な人たちのために」(殺人魔[インド]p-225) 驚いたことに、ここではパキスタンのムシャラフ前大統領は極めて立派な人物であるとされている。メディアはしばしば…
どのようにそれらの人たち、リーダーの立場の人たちがそこにいたったのか、そのプロセスはどうだったか。グローバルに通用するプロセスでそこに到達したのではなく、日本社会の常識、しきたりで今の立場にいたったことは明らかである。(p-188 PART3 「国際…
今は、社会がよくしてくれることを期待するのではなくて、自分で考えて選んで行かなきゃいけない時代。でも、自分で選んで一生懸命やれば、きちんと幸せになれる。(第5章 活躍する社会起業家たち 日本篇 p-223) 「現在の中の未来」として注目するのはやは…
若いうちに決まるもの。それは技術や専門的な知識ではなく、「心の構え」だ。二十代で一度もリーダーとして振る舞ったことのない人が、四十代で立派なリーダーになれるとは思えない。(第6章「地域を変える」が「社会を変える」p-184) 確かに。しかし、会…
だが面白いことにヨーロッパの音楽好きは、「上手い・下手」という言い方を、まずしない。そもそも、その語彙がない。(第二章 音楽を語る言葉を探す p-72) 音楽を聴くことに興味はあるが、それをどのように捉えていいのかが長らく分からなかった。「好き」…
それら全ての積み重ねが、周囲の人の中にあなたの印象を形づくり、評判をつくり、ふたたび、「メディア力」として、あなたに舞いもどってくる。(第1章 コミュニケーションのゴールとは? p-41) 自分の、周囲あるいは社会に対する総合的な発言力あるいはプ…
だが、職種によっては、勉強から仕事への脱却が、はかりにくいところもある。そこに、受験勉強を頑張るように、仕事を頑張る人がいても不思議はない。(勉強? それとも仕事? p-106) 非常に個人目線、現場主義の仕事論で、たくさん付箋を付けた。上記など…
市場の九番目のロスアンジェルスを「中心都市」とする市場の形式は、都会人をさらに狭いアパートに閉じ込め、都会の生活条件をさらに孤独なものにしてゆく。愛情はますます希薄化し、都会人は狭いアパートでセックス・パートナーとひっそりと暮らす。人間関…
そうした「ポスト形而上学」の時代の理論の可能性を追求し、批判の意味を模索し、たえず変貌する資本主義のそのつどの様態の理論化と政治参加の多元化を試み、人権の意味を新たに定義し直しながら、同時に複雑に多様化する差別や権利の剥奪を問題化し、一元…
研究、技術、経済、管理の自動化されたシステムを前にしては、技術的生活条件に対する社会の支配可能性の問い、つまり、技術的生活条件を生活世界の実践にどう統合するかという問いは、新たなヒューマニズムの要求する教養豊かな問いではあるが、絶望的に時…
マルクス主義的な「知」も含めて、近代知には、「客体」を分析し理解すべく、「客体」と向き合う自らの基本姿勢を疑おうとしない妙な”生真面目さ”がある。そのため、ややもすると、自己自身の基本姿勢を批判的に見るメタ・レベルの視点を欠き、自分の方法と…
編集長が新しくなって、構成などやや軟派になった感。なんだか普通の雑誌になってしまうと、prestigeがなくなって魅力が失われてしまう。代わりにeconomist誌の講読を考えたのだけれど、週刊だととても読み切れないので保留している。語学の勉強が出来ていな…
最高学府を出ながら、身の程を知る珍しい男だと柴三郎は思った。「ええ、遅鈍です。恃むところは辛抱強さしかありません」「きみはもしかして、謙遜してそうしたことをいっているのかもしれないが、細菌学を研究する上で最も大事なのは、辛抱強さだ。ゲドゥ…
演説の最後には、「真の日本の建設者は、私らの倒れたあと屍を乗り越えて進む無名の青年たちであることを信じて、今日の青年の奮起を絶叫しているのであります」と結ぶのを常にしていた。(生まれるのが早すぎた p-300) 久しぶりに親の家へ行ってテレビを見…
科学に対する信頼によっても、しかし私の厭世観はとり除けなかったばかりか、むしろ反対に、科学的な自然観の中に、厭世観を裏づける、新しい要素さえ見出すことになった。けれども、そんな心理的な状況下でも私を支えてきたものは、自分の創造的活動の持続…
ストーマとバルーンによる排尿は私にとっても生きてゆく気力を失わせるのに十分な苦痛と不便さでありました。(私の進行前立腺がんの軌跡 p-38) 人生の終盤にあって、このように病と戦いながら生きていく気持ちはどんなだろうかと思うといたたまれない。何…
これまでだったら大企業に就職したであろう者たちが、センスのない大企業を見捨て、もしくは、次の職へのステップアップのための踏み台程度にしか考えなくなっている。彼らには、役職よりも行動するセンスの方が重要なのだ。今や、彼らが求めるのは、「人生…