「日本のデザイン 美意識がつくる未来」 原 研哉 (2011) 岩波新書

日本のデザイン――美意識がつくる未来 (岩波新書)
よくできたデザインは、精度のいいボールのようなものである。精度の高いボールが宇宙の原理を表象するように、優れたデザインは人の行為の普遍性を表象している。デザインが単なるスタイリングではないといわれるゆえんは、球が丸くないと球技が上達しないのと同様、デザインが人の行為の本質に寄り添っていないと、暮らしも文化も熟成していかないからである。(2 シンプルとエンプティ p-48)
デザインの対象として日本全体に関心を向けた著作。そもそも著者の「デザインとは欲望のエデュケーションである」という洞察に感服。デザイナーの中では、デザインというものが見目の操作だけを意味するものではないことは、すでに自明のことであるのだろう。一方で、デザイナーでない一般の人々が自らの仕事の中で新しい解を見つけていくこともまた、デザインであるに違いない。それはルーチンワークや予定調和的な仕事からは生まれないが、そうでないものこそが「仕事」なのだと思いたい。(2012年8月5日読了)