「自分の仕事をつくる」 西村佳哲 (2009 初版本は2003) ちくま文庫

自分の仕事をつくる (ちくま文庫)
仕事を通じて、自分を証明する必要はない。というか、それはしてはいけないことだ。(あとがき p-274)
ここで取り上げられた人々は、実物で試行錯誤する(わたしたちは得てして頭の中だけで考え、錯誤だけしてしまう)、体験して感じ取った何かを大切にする、自分が欲しいと思うものを作る、自発的に仕事をする、など、むしろ、「当たり前のこと」を大事にしている。彼らの仕事のやり方は、実は分かりやすいのである。(中略)私たちは本当はすでに知っているのだ。(稲本喜則氏による 解説 p-330)
仕事観というのは結構“いい加減”で、ごく若い頃は、会社に勤めて生活できるだけのお金をもらう、というような近視眼的なイメージしか持っていないけれど、その会社だって誰かが作ったものであり、寿命があって、社会から必要とされるあいだ、その対価としてお金が発生しているのだ、といったことがだんだん分かってくる。もっと自分に引き寄せて考えれば、私が自分の人生の一部をそれに費やすとき、それをどうしたいか、そこに何を求めるか、といったことが問題になる。まさにそうした「すでに知っていること」を、「こんなものだ」「どうしようもない」と思考停止せずに追究していけば、「自分の仕事」を身の回りに見出すことも不可能ではないと思わされる。おそらくはみんな、どこかで折り合いをつけているのだろうけれど。(2012年8月11日読了)