2009-07-01から1ヶ月間の記事一覧

春宵十話 岡 潔(2006)光文社文庫(初版本は1963)

文化だって、外国で獲得したものをコピーするのがすなわち文化だと思っている。だからコピーをふやすのが文化を高めることだというわけで、大学ばかりやたらにふえることになる。日本の大学はヨーロッパ全土の大学を加えたよりも多いというが、いったいどう…

公共性 齋藤純一(2000)岩波書店

アーレントはレッシングの次の言葉でその講演を結んでいる。「各人をして彼が真理と見なすものを語らしめよ、そして真理そのものは神に委ねよ」。共通世界をめぐる言説の空間としての公共性からは、絶対的な真理は排されている。この空間は「人びとの言説の…

考える人 2009年夏号 特集 日本の科学者100人100冊 新潮社

人選にも内容にも疑問がないわけではないが、一般にはこうした科学者たちがいたとされていて、選ばれるのだな、ということが分かるのは面白い。しかし「文壇好み」の科学者の先生方の見解が、あたかも科学界全体の見解であるかのように、一般世間に流布して…

ハーバーマス コミュニケーション行為 中岡成文 (2003) 講談社

ハーバーマスはまた、経済システムや政治・行政システムに歯止めをかけるために、生活世界のうちから「反制度」を生み出すべきだという主張にも、一定の理解を示している。もちろん、文化的近代(モデルネ)の合理性をシステムの合理性と混同してしまい、近…

子どもの最貧国・日本 学力・心身・社会に及ぶ諸影響 山野良一 2008 光文社新書

子どもたちの貧困の実態に全く目を向けようとしないことで、結局、日本社会は大きな社会的損失を被り続けているのかも知れません。子どもたちは、貧困状況の連鎖のなかでもがき、その才能は生かされないままに、かえって発達上のさまざまな課題を背負ったま…

ポスト戦後社会 吉見俊哉 2009 岩波新書

同様のことが、八十年代、多くの日本の都市でも起こっていった。つまり、ディズニーランドが映画のスクリーンの三次元化としてあったのと同じように、現代日本社会における日常的現実も、次第にメディアによって提示される平面的な世界の拡張として経験され…