「美しき日本の残像」 アレックス・カー (2000 単行本は1993) 朝日文庫

美しき日本の残像 (朝日文庫)
遺跡を見ることによって各時代の主流になった思想が分かります。例えば、奈良時代には密教寺院、中世には禅寺、明治時代には汽車の駅が大きなモニュメントとして目立ちます。そして、現代はどうなってゆくでしょう?ヨーロッパや東南アジアの田舎を回ると村の中央に必ず教会の塔あるいは寺院の反り屋根が一番高いところに見えます。しかし、日本の田舎では一番高くて大層な建物はパチンコ店になっています。パチンコ台の前に座るのは現代の瞑想になっています。(第十一章 奈良の奥山 p-218
司馬遼太郎が絶賛したということで有名になった本。日本と日本人のていたらくを批判するのだけれど、首肯せざるを得ないところが多いし、このように斬新な視点をも持ち合わせている。祖谷だろうと天満宮だろうと日本国だろうと、最後はひとだし、その教育の程度だろうと思うのだけれど、パチンコとゲームばかりが栄えているように思える国に望みがあるのか、はなはだ心許ない。どっこい意外にちゃんとした人材が育っているのか、あるいは、そうやって民族は歴史の藻屑と消えていくのか。(2012年9月17日読了)