「茶の世界史 緑茶の文化と紅茶の社会」 角山 栄 (1980) 中公新書

茶の世界史―緑茶の文化と紅茶の社会 (中公新書 (596))
こうして紅茶文化は十八世紀の重商主義時代を生み出したばかりでなく、重商主義時代の典型的文化として形成されることになるのである。だからそれは本質的に一種の帝国主義ともいうべき外向的性格、つまり植民地支配を志向した攻撃的侵略的性格をもつようになる。いいかえると、紅茶文化は紅茶帝国主義として展開してゆくのである。(紅茶文化の光と影 p-95)
「〜の世界史」の嚆矢だろう。普段当たり前と思っていることが、そのルーツを探ると必ずしもそうではないことに気付かされる、というもの。イギリスの紅茶文化が、もともとは茶道や中国の緑茶が伝わった東洋文化なのだということは、言われてみればそうだが半信半疑。でも、歴史をひもとくとずいぶんと滑稽な仕方で受容されていったことが分かり、「後進国」さながらである。愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ。歴史を学ぶことの真の意味は、歳をとってようやく分かるようになるものである。(2012年10月20日読了)