「ジーノの家 イタリア10景」 内田洋子 (2011) 文藝春秋

ジーノの家―イタリア10景
ふと、心づけのコーヒーはありますか、と聞いてみる。/「ありますよ、お待ちしておりました」/バールマンはそう言って微笑み、奥の棚から淡いピンクの花柄の、あのコーヒーカップを出してきた。そして、コーヒーカップの脇に真新しいマルボロライトをひと箱、そうっと置いた。/「お二人からです」(初めてで最後のコーヒー p-222)
帯にエッセイの賞を二つ受賞したとあるが、読む歓びをしみじみと味わうことができるような本。著者はなにか、こうした出来事を「呼んでしまう」たちなのかもしれない。そんなことが実際あるのかと、しばし唖然とする。(2012年7月19日読了)