「打たれ強く生きる」 城山三郎 (1989 単行本は1985) 新潮文庫

わたしが『男子の本懐』で描いた浜口雄幸首相は、「男が事を為すに当っては、終始一貫、純一無雑でなければならぬ」との信念であった。無私ほど強いものはないのだ。(赤字の海の中で p-147) 新聞に連載されていた、サラリーマンを元気づけるようなコラムを…

「荒天の武学」 内田 樹、光岡英稔 (2012) 集英社新書

自分自身が生きる知恵、力を高めていって、どんなことがあっても生き残る。さっきの首狩り族の話ではありませんが、「守るべきものは守る」ということをきちんとやるためには、腕力で守れるものもあるし、総合的な組織力とか、説得力とか、あるいは政策構想…

「身体から革命を起こす」 甲野善紀、田中聡 (2007、単行本は2005) 新潮文庫

甲野は、「小成は大成を妨げる最大の要素である。そこそこの成功は、それ以上のものを追求させないための強力な目かくしとなる」と言う。人は、自分の「実感」を否定することは難しい。まして、それまでにしてきた苦労を愛さずにはいられない。苦労して上位…

「毒舌 身の上相談」 今 東光 (1994 単行本は1977) 集英社文庫

そういうこともあって、オレの場合は別に自分で計っているわけじゃないけど、まあ七十八年も生きてくると、オレ自身も有為転変の世の中を見てき、よその人も数奇なる運命を辿ってる。女の美醜も、男の才能も、親の計らいでもなきゃあ、己の計らいでもなく、…

「日本料理の歴史」 熊倉功夫 (2007) 吉川弘文館

その主張するところは『典座教訓』と同じで、食べ物をつくることが「行」であるように、食べることも「行」である、としている。巻頭の一節に「法はこれ食、食はこれ法なり」と述べた点にすべてがある。日本の食事文化のなかに、どこか精神論がいつもひそん…

「歴史の愉しみ方 忍者・合戦・幕末史に学ぶ」 磯田道史 (2012) 中公新書

わたくしの感覚からすれば、皇族や華族が学習院を休むのは、むしろ、あたりまえのことで、とりたてて騒ぐことではない。皇族や華族(大名・公家)というものは、とにかく健康で存在し続けることが大事であった。学校へ行くより、天候の悪い日には外出せず、…

「情報大爆発 コミュニケーション・デザインはどう変わるか」 秋山隆平 (2007) 宣伝会議

広告も同じです。ターゲットにあったメッセージを丁寧に配達するだけでは、何も起こりません。「人気が人気を呼び」「買いが買いを呼ぶ」ような社会的なダイナミズムを呼び起こすためには、メディアとメッセージが絶妙に組み合わされた、「空気のデザイニン…

「ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪」 今野晴貴 (2012) 文春新書

こうした、「ソフトな退職強要」が横行する社会では、心身を仕事に没入させようなどと考える方が、間違っている。そのため、今度は、もしまともな企業が若者を育てる目的のために厳しい業務を課したり、厳しい叱責を行ったとしても、それが本当に「育てるた…

「common cafe 人と人とが出会う場のつくりかた」 山納 洋 (2007) 西日本出版社

こうしたお店では、お店の人はお客さんとの間合いをはかっています。お客さんの力量をきちんと把握することで、よりこまやかな接客をして、お客さんに満足していただく。そのための方法論だそうです。お店の人が商品の知識をしっかり持って、質の高いものを…

「明日の広告 変化した消費者とコミュニケーションする方法」 佐藤尚之 (2008) アスキー新書

最後になるが、これから広告は「企業のソリューションから消費者のソリューションへ」と変わっていかないといけないと思っている。元々これはねじれの関係にある。企業は消費者のためにモノやサービスを作っていて、つまり「消費者のためのソリューション活…

「世界一旨い日本酒 熟成と燗で飲る本物の酒」 (2005) 古川 修 光文社新書

また、この低迷状態から脱出しようと、様々な商品開発も行われている。例えば、低アルコール濃度にしたり、ラベルをファッショナブルにしたり、ネーミングをロマンティックにしたりして、女性向けの商品を試作する試みなどが目立っている。しかし、これらの…

「かんさい絵ことば辞典」 ニシワキタダシ (2011) ピエブックス

「わけわけする」とか「しんきくさい」とか、関西弁と思わずに(とはいえ、どこの言葉ですかと言われると困るが)使っていた言葉を発見して目からウロコ。きわめて魅力的なキャラクター群が立ち上がって、商魂たくましく(←大阪なので)DVDも出て、ローカル…

「君主論」 マキアヴェリ 池田 廉 訳 (2002) 中央公論新社

さて君主は、戦いと軍事上の制度や訓練のこと以外に、いかなる目的も、いかなる関心事も持ってはいけないし、またほかの職務に励んでもいけない。つまり、このことが、為政者がほんらいたずさわる唯一の職責である。(十四 軍備についての、君主の責務 p-86…

「若者を殺すのは誰か?」 城 繁幸 (2012) 扶桑社新書

新成人の数は2012年で122万人とさらに落ち込んでいるから、この先、新人はさらにバカになり、国内市場はさらに縮小するだろう。そういった構造にメスを入れることなく、ただ「最近の若者はバカになった」で片付けようとする中高年を見ると、つくづく日本人も…

「ウイスキーシンフォニー 琥珀色への誘ない 増補改訂版」 嶋谷幸雄 (2003) たる出版

我が家の正月酒はウイスキーが中心である。入社直後のワインを仕事としていた時代はワインが中心であった。酒の内容は変わったが「ハレ」の日に神に豊作を祈り、神と酔いを共有した昔の人と精神は少しも変わっていないと思っている。酒造りを職としてきた人…

「カウンターの中から見えた「出世酒」の法則 仕事が出来る男は、なぜマティーニでなくダイキリを頼むか」 古澤 孝之 (2012) (講談社プラスアルファ新書)

私はバーテンダーとして、最後の一杯をお出し出来たことを、本当にうれしく思っています。その方の素晴らしい人生に関わり、次の人生へ送り出す一杯をお出しすることが出来て、バーテンダー冥利につきるというものです。この仕事をしていなければ、遭遇でき…

「走る哲学」 為末 大 (2012) 扶桑社新書

義務は無邪気には勝てず、努力は夢中に勝てない。やりたいからやってるんだい、やりたくなかったらやんないやい、という自分の中の子どもの部分を否定せず、ここはちょっと頑張ろうね、でも明日は遊ぼうね、と大事に育てる事。心の子どもを叱りすぎて黙らせ…

「ウイスキーの科学」 古賀邦正 (2009) 講談社

「飲酒は二十歳を過ぎてから」というまでもなく、エタノールの味もまた、“大人の味”だ。面白いことに、基本味として認知されていない「辛み」「渋み」「アルコールの味」はいずれも“大人の味”であり、痛覚などの侵害受容器を介して知覚される「痛み」を伴う…

「知る悲しみ やっぱり男は死ぬまでロマンチックな愚か者」島地勝彦 (2011) 講談社

しかもわたしは「じつはおれはガンなんだ」と思わずいうところだった。その一言はぐっと我慢した。そのあとわたしはベッドのなかで悔やんだ。「なんであいつにハンディくれなんていったんだろう。おれのダンディズムが許さない。シバレン先生、ごめんなさい…

「幸福な食堂車 九州新幹線のデザイナー 水戸岡鋭治の「気」と「志」」 一志 治夫 (2012) プレジデント社

つまりは、頼んでくる人がいるかどうかがすべてであって、仕事というのは、人との出会いしかないわけです。仕事で一番大事なのは、どういう人と出会うか、それしかないんです。そのために切磋琢磨して、素晴らしい人に出会ったときに、その人がいいねと言っ…

「茶の世界史 緑茶の文化と紅茶の社会」 角山 栄 (1980) 中公新書

こうして紅茶文化は十八世紀の重商主義時代を生み出したばかりでなく、重商主義時代の典型的文化として形成されることになるのである。だからそれは本質的に一種の帝国主義ともいうべき外向的性格、つまり植民地支配を志向した攻撃的侵略的性格をもつように…

「最新 地域再生マニュアル」 山浦 晴男 (2010) 朝日新聞出版

地域づくりを支援するようになってみえてきたことの一つは、地域がその気になって旗をあげて取り組み出せば、関係者やそれ以外の外の人たちまでが応援する動きが出てくる、ということである。逆にいえば、自らは何もせず外の手助けをまつ地域は、そのまま没…

「ローマ法王に米を食べさせた男」 高野誠鮮 (2012) 講談社

やってきたことが間違っていたんです。判断の誤りの連続だったわけです。だから何十年やってても改善できなかったんです。それで長い間、間違った判断を下してきた人たちに稟議書を出して、もう一回伺いをたてるのはおかしいと思ったんです。しかも稟議書を…

「美しき日本の残像」 アレックス・カー (2000 単行本は1993) 朝日文庫

遺跡を見ることによって各時代の主流になった思想が分かります。例えば、奈良時代には密教寺院、中世には禅寺、明治時代には汽車の駅が大きなモニュメントとして目立ちます。そして、現代はどうなってゆくでしょう?ヨーロッパや東南アジアの田舎を回ると村…

「モロッコ革の本」 栃折 久美子 (1991) ちくま文庫

amazon 四十六年。四十六年間、毎日毎日同じことのくり返しだ。一日に二リットルの牛乳を飲み……これは銅の毒にやられないためなんだそうだが、他のものは食べたくないと言ってね。私のこの銘の金版を彫った男だ。人間はそんなふうにして生きているよ。どこの…

「どうする? 日本企業」 三品和広 (2011) 東洋経済新報社

成長は結果として実現するもので、目標は、「事業活動を通して世の中にもたらす変化」という言語で語るべきです。そもそも資本主義は社会に貢献する企業に対して利益という報償を出す制度であり、極論すれば、企業に期待される社会貢献は二種類しかありませ…

「ほんものの日本人」 清野由美 藤森 武 (2007) 日経BP社

「やるからにはパーフェクトゲームをやってやる」という秘めた気迫は後に、アカデミー賞という人生の大転換に結実したが、その記念碑であるオスカー像にしても「どこかの棚に放り込んであって、見ることもないわね」。淡々としている、というよりも超越的な…

「高校生レストラン、行列の理由」 村林 新吾 (2010) 伊勢新聞社

私は、確かに実践教育を重視してはいますが、経験さえすればいいと考えているわけではありません。もし経験がすべてなら、学校なんてそれこそ不要でしょう。しかし、「なぜそうした調理の仕方をするのか」「その料理はどんな歴史があるのか」などの知識を学…

「ニッポンの風景をつくりなおせ 一次産業×デザイン=風景」 梅原 真 (2010) 羽鳥書店

いちばん森が多い国=高知 (84(はちよん) p-223) 高知はひとつの「国」である、という考え方が大事なんだろうと思う。お上ありき、大都市ありき、ではなくて、それらと互角に渡り合う「独立国としてやっていく」という気概。ローカルのポテンシャルにう…

「自分の仕事をつくる」 西村佳哲 (2009 初版本は2003) ちくま文庫

仕事を通じて、自分を証明する必要はない。というか、それはしてはいけないことだ。(あとがき p-274) ここで取り上げられた人々は、実物で試行錯誤する(わたしたちは得てして頭の中だけで考え、錯誤だけしてしまう)、体験して感じ取った何かを大切にする…