「幸福な食堂車 九州新幹線のデザイナー 水戸岡鋭治の「気」と「志」」 一志 治夫 (2012) プレジデント社

幸福な食堂車 ― 九州新幹線のデザイナー 水戸岡鋭治の「気」と「志」
つまりは、頼んでくる人がいるかどうかがすべてであって、仕事というのは、人との出会いしかないわけです。仕事で一番大事なのは、どういう人と出会うか、それしかないんです。そのために切磋琢磨して、素晴らしい人に出会ったときに、その人がいいねと言ってくれるその瞬間のために、自分がそれまでの過去の実績を持って、この点数でどうでしょうかとやる。いや、この点数じゃダメよ、この仕事は、と断られたら、また頑張ってその点数までいくよう努力する。そして、仕事をもらう。そういう世界だと僕は思いますけどね。(第13章 答えは子どもの頃に見聞きした中にある p-303)
あるいは歳を取って頭が硬くなったということなのかもしれないが、「本質を知る人」というのはなかなかいないことが、大人になると分かってくる。そういう人のことを書いた本だと思う。デザイナーとは適当な色や形を作り出す人のことではなくて、問題の解決法を示す人のことをいうのだ、という話は佐藤可士和氏あたりで知ったのだが、この人の目線はさらにダヴィンチや北斎にまで届いている。はたして自分は本質を見失っていないか、何を守り、どう動くべきなのか、真摯に省みなければと思わされる。(2012年11月17日読了)