「地域の力−食・農・まちづくり」 大江正章 (2008) 岩波新書

地域の力―食・農・まちづくり (岩波新書)
「緑と農の体験塾」のある利用者が一年間にわたって、採れた野菜の重さを正確に計り、近くのスーパーでの価格と換算してみた。それによると、中玉トマト九四三二円、キュウリ七七〇一円、里芋六五六三円など、合計九二一一三円である。加藤によれば、この人の収穫量はやや上とのこと。それでも、区役所の担当者が言う「年間で八万円になるそうです」が平均的なところとすれば、きわめておトクである。(第8章、市民皆農のすすめ p-181)
こういう“下世話な”ところでメリットがないとダメだと思う。地域振興の種々の成功例を集めた本。大都市圏以外の地域が疲弊しているというのは事実なのだろうけれど、それが問題として広く認識されたころには、すでにさまざまな克服事例があるということだろう。ただ前例を踏襲しながら置かれた状況を嘆いているのではダメで、「こうありたい」という思いを具現化する方法を必死で考え、七転八倒するところからしか、新しいものは生まれてこない。(2012年7月7日読了)