2009-12-01から1ヶ月間の記事一覧

日本の思想 丸山真男 (1961) 岩波新書

一言でいうと実もふたもないことになってしまうが、つまりこれはあらゆる時代の観念や思想に否応なく相互連関性を与え、すべての思想的立場がそれとの関係で―否定を通じてでも―自己を歴史的に位置づけるような中核あるいは座標軸に当る思想的伝統はわが国に…

音盤博物誌 片山杜秀(2008)アルテスパブリッシング

音楽家の日常の姿は、その人の音楽を反映するものだと思う。たとえば、私の見かけた、若き日のエリアフ・インバルは、食堂の人目につくテーブルで、お膳の前にフル・スコアを立て、肉を頬ばりながらページを捲っている、いささか怪しげな人物だった。チャー…

音盤考現学 片山杜秀 (2008) アルテスパブリッシング

そうした状況がほぼ確定し、小沢開作が大きな幻滅に包まれていた三十五年、征爾は生まれた。父がその名前に託したものはもはや明白だろう。板垣と石原の力を借りてこそ産まれるはずだった「調和」の楽園、理想の満州国は死産に終わった。開作はその理想の力…