「オリガ・モリゾヴナの反語法」 米原万里 (2005 単行本は2002) 集英社文庫

オリガ・モリソヴナの反語法 (集英社文庫)
そもそもオリガ・モリゾヴナは、実在した先生ですから。ソビエト当局が「彼女を解雇しろ」と校長に命令したのに対して、先生たちが、彼女が素晴らしい教師で、彼女を失うことはいかに大きな損失かという、電文にしてはあまりにも長すぎる嘆願文を書いた。そこに私の知っている先生たちの署名があった。ロシア外務省の資料館で、それを読んだときには、もう涙がとまらなかったですね。(対談『反語法』の豊かな世界から 巻末p-506)
スターリンによる粛清の話には本でも映画でもほとんど接した記憶が無くて、ただ、なんだかとても恐ろしいことだったらしいというくらいの知識しかない。結局、ナチスドイツのユダヤ人虐殺的な感じで行われていたらしいのだけれど、どうしてこう、同じようなパターンになるのかが不思議。ヒトの遺伝子に組み込まれた何かなのか? ソ連の解体、あるいは東欧の独裁政権の崩壊が一部の人たちにとって何を意味したのかが、いまさらながら少し分かった気がする。(2012年5月22日読了)