ある科学者の闘病の軌跡(2009)山田康之 誠文堂新光社

ある科学者の闘病の軌跡―進行前立腺がんと共に十六年
ストーマとバルーンによる排尿は私にとっても生きてゆく気力を失わせるのに十分な苦痛と不便さでありました。(私の進行前立腺がんの軌跡 p-38)
人生の終盤にあって、このように病と戦いながら生きていく気持ちはどんなだろうかと思うといたたまれない。何故それでも生きるのかと、自問せずにはいられないに違いない。著者のように社会的に大きな仕事をしてきた人間であれば、その自負心が助けになるだろう。しかし、いわゆる無名の人間であればどうか。それでも彼は、自分の人生がまだ生きるに値するという気持ちを持てるだろうか。
(2009年8月15日読了)