日本の思想 丸山真男 (1961) 岩波新書

日本の思想 (岩波新書)
一言でいうと実もふたもないことになってしまうが、つまりこれはあらゆる時代の観念や思想に否応なく相互連関性を与え、すべての思想的立場がそれとの関係で―否定を通じてでも―自己を歴史的に位置づけるような中核あるいは座標軸に当る思想的伝統はわが国には形成されなかった、ということだ。(I 日本の思想 p-5)
「無責任の体系」とかで名前は知っていたけれども読んだことのなかった本。大学受験の現代文で読まされる小林秀雄などと並んで、このあたりの思想家の文章は何となく難解な印象があって敬遠してきた。確かに話の展開を追っていくのに骨が折れるし、文学を扱った論考は当時の事情を知らないので意味不明。しかし、言っていることはきわめて真っ当だし、現代でも十分に通用する。おそらくここで日本人の思想や社会についての最も重要な批判は言いつくされていて、あとの世代の人間が何を言っても結局はこれに尽きるのだろうと思う。いま同じような印象を持っているのが福沢諭吉。本を選んで、もっと読んでみたい。(2009年12月24日読了)