職業としての大学教授 潮木守一 (2009) 中公叢書

職業としての大学教授 (中公叢書)
この長年のお手盛り人事が大学、学問の沈滞を招いてきた。しかも給与は国立私立を問わず、全国どこの大学に行ってもたいして変わらない。優れた研究成果を上げた教授もそうでない教授も、優遇もなければ制裁もない。これほどの悪平等はいったいいつまで許されるのだろうか。学問的野心に燃えた若者世代は、いつまでこの制度に付き合うつもりなのだろうか。すでに心ある若者は見切りをつけはじめているのではなかろうか。(第三章 大学教師の値段はどうやって決まるのか p-114)
日本の大学だけが、教授の人数がそれ以下の職位の人数よりも多い、人口構成として逆ピラミッド型になっていることを指摘。この手の議論は文系学部が中心で、理系学部ではまた少し違うのではないかという疑問はいつも感じるが、逆ピラミッド型というのには呆れる。「ゆとり」教育で初〜中等教育にダメージを与え、一方で「デキない」博士を大量生産した彼らの世代は、いったい何をやりたかったのか。今の大学教育は「敗戦処理」になってしまった。大学の人間はこれまで、その後継者の育成にあまりにも無頓着であったというのもその延長上にあるだろう。優れた後継者を育成したのは、明治初期の第一世代の大学教授たちである。それは彼らが国から課された役割でもあっただろうが、彼らがヨーロッパで学んだこととも無縁ではないと思う。彼の地こそサイエンスの発祥の地であり、人を育てることが学問の圧倒的な伝統を数百年に亘って連綿と継承するために不可欠な条件であることを、よく理解しているだろう。(2009年11月15日読了)