小説 後藤新平 行革と都市政策の先駆者(1999)郷 仙太郎 学陽書房

小説 後藤新平―行革と都市政策の先駆者 (人物文庫)
演説の最後には、「真の日本の建設者は、私らの倒れたあと屍を乗り越えて進む無名の青年たちであることを信じて、今日の青年の奮起を絶叫しているのであります」と結ぶのを常にしていた。(生まれるのが早すぎた p-300)
久しぶりに親の家へ行ってテレビを見ると、選挙の話で喧しい。大変だ、政治が悪い、変えなくてはいけない、の大合唱だが、誰も「我々が悪かった」とは言わないようだ。この時期に戦争回顧ものをやるのも10年以上変わらない光景である。あたかも時間が止まったようで、何ら進歩の跡が見られない。驚くべきことだ。
著者の思いも込められているのだろうから、どこまでが実像なのか判然としないが、「科学的な」思考を最初に学んだ人々にとっては、まだ社会が近世の迷妄に沈んでいた明治期には、いくらでもやることがあったのだろう。しかし、いまだその頃のまま沈んでいるところもあるように思う。その責は、若い人に自らの世代を乗り越えさせようとしなかった大人たちが負わねばならない。「我々が至らなかった」と言って、引き下がらなければならない。
(2009年8月14日読了)