臨床家 河合隼雄 谷川俊太郎・鷲田清一・河合俊雄 編 (2009) 岩波書店

臨床家 河合隼雄
人間力」と自分で読んでいたけれども、自分が関わることによって不思議なことが起こってくることには、相当な信頼と自信を持っていた。そしてそれは何よりも、何もしないことが、同時に激しさを秘めていることにも関係しているように感じられる。あまり表には出さなかったが、とても激しい人であった。(序論 p-5)
河合隼雄の書いたものは大学時代にしばしば読んだ。生き方について、自分はどうあるべきか、ということについて、あるいは自分でもよく分からないことについて、長らく考えていて、おそらくは彼のお弟子さんの一人に、何年か断続的に話を聴いてもらった時期がある。「泳げないのにいきなり飛び込み台から飛ぼうとしなくてもいいんだよ」という言葉を今でも思い出す。弟子達や親交のあった人たちが示す深い尊敬の念から、その「総元締め」の偉大さが伝わってくる。文化庁長官をしながらも患者を診ていたというのは、「ひとが生きる」ということについての彼の深い理解を示しているように思う。(2009年11月19日読了)