2009-08-17から1日間の記事一覧

北里柴三郎(上・下)雷(ドンネル)と呼ばれた男(2007)山崎光夫 中央公論新社(単行本は2003)

最高学府を出ながら、身の程を知る珍しい男だと柴三郎は思った。「ええ、遅鈍です。恃むところは辛抱強さしかありません」「きみはもしかして、謙遜してそうしたことをいっているのかもしれないが、細菌学を研究する上で最も大事なのは、辛抱強さだ。ゲドゥ…

小説 後藤新平 行革と都市政策の先駆者(1999)郷 仙太郎 学陽書房

演説の最後には、「真の日本の建設者は、私らの倒れたあと屍を乗り越えて進む無名の青年たちであることを信じて、今日の青年の奮起を絶叫しているのであります」と結ぶのを常にしていた。(生まれるのが早すぎた p-300) 久しぶりに親の家へ行ってテレビを見…

旅人 ある物理学者の回想(1960)湯川秀樹角川文庫

科学に対する信頼によっても、しかし私の厭世観はとり除けなかったばかりか、むしろ反対に、科学的な自然観の中に、厭世観を裏づける、新しい要素さえ見出すことになった。けれども、そんな心理的な状況下でも私を支えてきたものは、自分の創造的活動の持続…

ある科学者の闘病の軌跡(2009)山田康之 誠文堂新光社

ストーマとバルーンによる排尿は私にとっても生きてゆく気力を失わせるのに十分な苦痛と不便さでありました。(私の進行前立腺がんの軌跡 p-38) 人生の終盤にあって、このように病と戦いながら生きていく気持ちはどんなだろうかと思うといたたまれない。何…