2009-01-01から1年間の記事一覧

チェンジメーカー 社会起業家が世の中を変える(2005)渡邊奈々 日経BP社

きっとまた、日本人は礼儀正しいとか、きめ細やかな配慮があるとか、そんな聞きなれたほめ言葉だろう。やれやれ……。ところが彼は次にこう言ったのです。「自分より恵まれない人たちに対するコンパッションがないってことだよ」私にとっては予想外の言葉でし…

働く人のためのキャリアデザイン(2002)金井壽宏 PHP新書

二十代のころにはまだ難しいが、三十代、四十代以降になると、これまでの来し方を振り返ることが出来る。今までやってきたこと、できたこと、できなかったこと、できたことがすごくうれしかったこと、できたけれどさほど感動しなかったこと、できなかったけ…

キャリアデザイン入門 I 基礎力編 / II 専門力編 (2006)大久保幸夫 日経文庫

多様性を理解し尊重する力は、多様な人々とコミュニケーションをした経験の積み重ねによってしか得ることができない。数人の友達とだけいつも一緒にいるという人は、あうんの呼吸でわかりあえる楽な人間関係の中に埋没していることになり、このような力は磨…

ムハマド・ユヌス自伝 貧困なき世界を目指す銀行家 ムハマド・ユヌス&アラン・ジョリ(1998)早川書房

しかし、どうしてそうやって後ろ向きに考えるのだろう? 私たちのやり方を取り消すことはできない。私はすべて変化を目指してやっているのだ。変化の過程では、年を取った人は若い者に道を譲っていく。完全を目指すなら、年長者の考えを変えさせ、彼らを犠牲…

春宵十話 岡 潔(2006)光文社文庫(初版本は1963)

文化だって、外国で獲得したものをコピーするのがすなわち文化だと思っている。だからコピーをふやすのが文化を高めることだというわけで、大学ばかりやたらにふえることになる。日本の大学はヨーロッパ全土の大学を加えたよりも多いというが、いったいどう…

公共性 齋藤純一(2000)岩波書店

アーレントはレッシングの次の言葉でその講演を結んでいる。「各人をして彼が真理と見なすものを語らしめよ、そして真理そのものは神に委ねよ」。共通世界をめぐる言説の空間としての公共性からは、絶対的な真理は排されている。この空間は「人びとの言説の…

考える人 2009年夏号 特集 日本の科学者100人100冊 新潮社

人選にも内容にも疑問がないわけではないが、一般にはこうした科学者たちがいたとされていて、選ばれるのだな、ということが分かるのは面白い。しかし「文壇好み」の科学者の先生方の見解が、あたかも科学界全体の見解であるかのように、一般世間に流布して…

ハーバーマス コミュニケーション行為 中岡成文 (2003) 講談社

ハーバーマスはまた、経済システムや政治・行政システムに歯止めをかけるために、生活世界のうちから「反制度」を生み出すべきだという主張にも、一定の理解を示している。もちろん、文化的近代(モデルネ)の合理性をシステムの合理性と混同してしまい、近…

子どもの最貧国・日本 学力・心身・社会に及ぶ諸影響 山野良一 2008 光文社新書

子どもたちの貧困の実態に全く目を向けようとしないことで、結局、日本社会は大きな社会的損失を被り続けているのかも知れません。子どもたちは、貧困状況の連鎖のなかでもがき、その才能は生かされないままに、かえって発達上のさまざまな課題を背負ったま…

ポスト戦後社会 吉見俊哉 2009 岩波新書

同様のことが、八十年代、多くの日本の都市でも起こっていった。つまり、ディズニーランドが映画のスクリーンの三次元化としてあったのと同じように、現代日本社会における日常的現実も、次第にメディアによって提示される平面的な世界の拡張として経験され…

働き方革命 あなたが今日から日本を変える方法 駒崎弘樹(2009)ちくま新書

「違うんだ。みんなで闘わないとダメなんだ! 特に俺たちの世代は一番つけが回ってくるんだ。俺たちが年老いたときに年金や社会保障が破綻していないかどうか、は俺たちが『働き方革命』を起こせるかどうか、にかかっているんだよ。」 「ピンチはチャンスさ…

思考停止社会 「遵守」に蝕まれる日本 郷原信郎(2009)講談社現代新書

まず、頭を上げて、印籠にしっかり向き合ってくことが、国民みんなが生き生きと暮らしていける、働いていける日本の未来を作っていくドラマの始まりなのです。そのような行動を、個人から複数の人間に、そして、組織に、さらに社会全体へと拡大していくこと…

プルーストとイカ 読書は脳をどのように変えるのか? メアリアン・ウルフ(2008)インターシフト

スペイン語や日本語、ロシア語を話す"理想的なひざ"の上で育った子どもたちにとっては、英語の読み方を学ぶのはそれほど大変なことではないし、英語の物語の本を読み聞かせてもらっていれば、自分の母国語のなじみ深い単語や概念を第二言語のそれと結び付け…

多読術 松岡正剛 2009 ちくまプリマー新書

自宅の書斎や応接間にあまりに本が多いので、「いつ、これだけの本を読まれるんですか」とうっかり尋ねたんですね。そうしたら、下村さんはちょっと間をおいて、「君はいつ食事をしているかね」と言われた。これでハッとした。いえ、しまったと思った。もう…

調べる技術・書く技術 野村 進 2008 講談社現代新書

自分の書いた文章を読み返すときには、必ず声に出して読むこと。黙読した際には「このままでよい」と思えた文章でも、声に出してみると、つっかえたり言いよどんだりするものだ。そのときには、ためらわずに書き直す。(第五章 原稿を書く p-148)基本的なこ…

日本人の英語 マーク・ピーターセン 1988 岩波新書

先行して意味的カテゴリーを決めるのは名詞でなく、aの有無である。そのカテゴリーに適切な名詞が選ばれるのはその次である。もし「つける」で表現すれば、「aに名詞をつける」としかいいようがない。「名詞にaをつける」という考え方は、実際には英語の世界…

アダム・スミス 「道徳感情論」と「国富論」の世界 堂目卓生 2008 中公新書

めざす理想が、いくら崇高なものであっても、そこに至るまでの道が、あまりにも大きな苦難をともなうものであれば、人びとは、統治者の計画についていくことができないであろう。体系の人は、このことをわかろうとしない。体系の人は、理想を正しく理解さえ…

Foresight 2009年5月号 新潮社

http://www.shinchosha.co.jp/foresight/「大変な官僚内閣制になる。後世えらいことをしたといわれるのは確実。軍務大臣現役制を復活した広田弘毅のように裁判にかけられる心配があるので、自分は反対したと記録にとどめてほしい」(作家の堺屋太一氏)、こ…

東京日記 卵一個ぶんのお祝い。 川上弘美 2005 平凡社

東京日記2 ほかに踊りを知らない。 川上弘美 2007 平凡社 なんてことはないのに、ただただ可笑しい。(2009年4月読了)

松井教授の東大駒場講義録 ー地球、生命、文明の普遍性を宇宙に探る 松井孝典 2005 集英社

ここに至るまでの段階で、地球システムの構成要素として最初になくなるのはたぶん人間圏でしょう。ついで生物圏が失われ、その後、海、大陸とこれまでの地球史で分化してきた物質圏がその誕生順とは逆の順で消滅し、より均質な最初の状態にもどっていくとい…

ビジネスに「戦略」なんていらない 平川克美 2008 洋泉社

「どうやって、儲けるの?」という問いの前に、「何を与えたいのか?」という問いが先行してはじめて、起業の物語はスタートします。というのは、与えることなくしてその反対給付であるお金を手にすることは出来ないというのが、ビジネスの順序だからです。…

知の挑戦 〜科学的知性と文化的知性の統合〜 エドワード・O・ウィルソン 2002 角川書店

物理学者は見事な成功をおさめたが、それと同時に、数学の助けのない直感の限界をあきらかにしたー―彼らが発見した自然を理解するのが非常にむずかしくなったのだ。理論物理学や分子生物学は生まれつき身についているものではない。科学の進歩の代償は、「現…

落下傘学長奮闘記 大学法人化の現場から 黒木登志夫(2009)中公新書ラクレ

誰が、教養教育を行うのか。考え出されたのは、「全学出動方式」であった。全学の教員が、みんなで教養教育を行おうという考えである。私は、岐阜大に着任して直ぐに、この制度は、「全学が出動したくない方式」であることに気が付いた。 (教育に軸足を置く…

山口組概論 ー最強組織はなぜ成立したのか 猪野健治(2008)筑摩新書

改正暴対法下でのやくざ社会と警察の攻防はこれから本番を迎える。私が懸念するのは、やくざ社会から破門、絶縁された元組員たちの行方だ。ここ数年で数千人に上ると推定されるが、もちろん彼らとて食べていかなければならない。どう考えても普通に再就職で…

Foresight 4月号 新潮社

http://www.shinchosha.co.jp/foresight/ 「私どもができるとすれば、研修生の話を聞き、受け入れ機関につなぐ。その後は、当事者で納得いくよう話し合っていただく。(JITCOは行政機関ではないため)法的権限はありませんので…」(企画調整課) 受け入れ企…

ビジネス脳はどうつくるか 今北純一(2006)文藝春秋

ミッションを持つ人は、無意識のうちに同じような人を探してある種の信号を発しています。そういう信号を発している人は、互いにすれ違うだけで分かる。そして、そこには必ず、思いがけない出会いが生まれます。それは決して偶然ではなく、必然的な出会いで…

俺は、中小企業のおやじ 鈴木 修(2009)日本経済新聞社

SOSというのは、国が定めた規則でも何でもなく、自分たちでつくったものです。不都合があるなら、自分たちで直せばいいのです。しかし、いったん規則が出来ると、自分の頭で考えずにそれに従う人が出てきます。これを世間では「大企業病」というのでしょうか…

大平正芳 「戦後保守」とは何か 福永文夫(2008)中公新書

そこに大平のリーダーシップの欠如を見ることはたやすい。これに対し、彼は「政府が引っ張って行って、それに唯々諾々とついていくような国民は、たいしたことを成し遂げられない。政府に不満を持ち、政府に抵抗する民族であって、はじめて本当に政府と一緒…

もう、君には頼まない ― 石坂泰三の世界 城山三郎 (1995) 毎日新聞社 (文春文庫 1998)

「公定歩合を動かせば、政府の低金利政策は破綻したことになり、池田内閣に致命傷を負わせる。それでもいいのか」と、ある人に詰め寄られた。石坂は即座に言い返した。「池田内閣と日本とどっちが大事だ」 (温室の中 p-193)しばらく前に、(日本は政治三流…

「粗にして野だが卑ではない」 石田禮助の生涯 城山三郎(1988)文藝春秋(文春文庫 1992)

「年間五十億人という人命を預かる職は、金をもらってやるべきではない」 (若き兵士の如く p-23)晩年の描写からは、面倒くさい爺さんだと思うけれども、この国でまっすぐに、思ったように生きながら、社会的に成功し、尊敬もされる、ということが、ほんの…