松井教授の東大駒場講義録 ー地球、生命、文明の普遍性を宇宙に探る 松井孝典 2005 集英社

松井教授の東大駒場講義録 ―地球、生命、文明の普遍性を宇宙に探る (集英社新書)

ここに至るまでの段階で、地球システムの構成要素として最初になくなるのはたぶん人間圏でしょう。ついで生物圏が失われ、その後、海、大陸とこれまでの地球史で分化してきた物質圏がその誕生順とは逆の順で消滅し、より均質な最初の状態にもどっていくというのが地球の未来のシナリオです。我々人間の存在ということでいえば、たとえ生物圏の種の一つとして生き残ったとしてもあと五億年で失われてしまいます。(11時間目 天体衝突と地球の進化II p-229)

文明論のようなものを期待したが、本書はほぼ完全に天文学。ものを見る時間と空間のスケールが違う人の視点はしかし、興味深いものではある。五億年は長いとはいえ、どう頑張っても最後は地球自体がなくなってしまう。我々は、結局はそれだけの存在でしかないというのは、あたりまえのことではあるがなんとも切ない。
(2009年4月28日読了)