思考停止社会 「遵守」に蝕まれる日本 郷原信郎(2009)講談社現代新書

思考停止社会~「遵守」に蝕まれる日本 (講談社現代新書)

まず、頭を上げて、印籠にしっかり向き合ってくことが、国民みんなが生き生きと暮らしていける、働いていける日本の未来を作っていくドラマの始まりなのです。そのような行動を、個人から複数の人間に、そして、組織に、さらに社会全体へと拡大していくことで、「遵守」のプレッシャーを乗り越えて、より良い社会を作っていくためのパワーが高まっていきます。(中略)社会的要請に対する鋭敏さ(センシティビティ:sensitivity)と、人や組織がお互いに力を合わせること(コラボレーション:collaboration)の二つの組み合わせによって、より良い社会を実現するためのパワーを高めていくことが出来るのです。(終章 思考停止から脱却して真の法治社会を p-199)

バカバカしいメディアスクラムを遠ざけるために、もはやテレビも新聞も見ない人間にとって、不二家の事件とか、伊藤ハムの事件とか、詳しく知らないことがらの顛末を解説してもらったのはありがたい。至極真っ当な主張だが、しかし逆に、いったい誰がこのような思考停止に陥っているのか、それをいま社会で主導しているのか、という疑問が湧く。裁判員制度をゴリ押ししているのは誰なのか、メディアを腐敗させているのは誰なのか。どれもこれも、現在引退間際の特定の年代の人間の仕業なのだとしたら、彼らの世代がいまや決定的に「ズレて」しまっていることが、この社会の不幸を増幅しているのだろうと思う。我々は「近頃の若者は…」ではなく、「まったく近頃の年寄りは…」と呆れかえらなければならない「未曾有の」時代を生きているのではないか*1
(2009年6月12日読了)

*1:夏野 剛という人が、同じことを指摘している。