大平正芳 「戦後保守」とは何か 福永文夫(2008)中公新書

大平正芳―「戦後保守」とは何か (中公新書)
そこに大平のリーダーシップの欠如を見ることはたやすい。これに対し、彼は「政府が引っ張って行って、それに唯々諾々とついていくような国民は、たいしたことを成し遂げられない。政府に不満を持ち、政府に抵抗する民族であって、はじめて本当に政府と一緒に苦労して、次の時代をつくれる」と応じる。
(「含羞」の保守政治家 p-276)
物心ついて、記憶にある首相はこの人以降なのだけれど、なんともパッとしない風采の裏で、きちんと現代を見通し、そのあるべき姿を描こうとしていたことに驚く。現在の日本の政治が不幸なのは、政治家とそれ以外の人々との間で、未来を見通す視線の長さに違いがなくなってしまったからではないか、と思わされる。
(2009年3月27日読了)