子どもの最貧国・日本 学力・心身・社会に及ぶ諸影響 山野良一 2008 光文社新書

子どもの最貧国・日本 (光文社新書)
子どもたちの貧困の実態に全く目を向けようとしないことで、結局、日本社会は大きな社会的損失を被り続けているのかも知れません。子どもたちは、貧困状況の連鎖のなかでもがき、その才能は生かされないままに、かえって発達上のさまざまな課題を背負ったまま次の世代へと、つまりは親になっていきます。
そこで生じる社会的な損失とは、この本全体で見てきたように、子ども個人個人の問題と見えているものが、結局、社会全体の生産性の減少へとつながり、貧困な状況に置かれた個人や家族のやる気を奪い、精神的な疾患などのさまざまな障害にさえつながる可能性を持つものです。(7章 各国の貧困対策に学ぶ p-257)

しばらく前に、日本は新生児死亡率は低いのに幼児死亡率が高いという記事を読んだのを思い出した。虐待によるのかも知れない、という恐れが暗にあるのだと思う。
子どもの抱える問題は、それが貧困であれ、人数が少ないことであれ、まともに躾けられていないことであれ、単に「弱いものに配慮しましょう」といったヒューマニスティックな話ではない、ということ。それは我々の社会を脅かす、「我々にとっての危機」なのだ、という認識が早く拡まらないと、我々は、我々が先の世代から営々と受け継ぎ、守ってきた社会を、我々の子供たちがいとも簡単に破壊していくさまを目の当たりにするだろう。
(2009年6月読了)