2011-01-01から1年間の記事一覧

「一日一生」酒井雄哉 (2008)朝日新書

桜は咲くことで精いっぱい、「今年も咲きましたぞー」ってみんなに教えてくれているんじゃないって。来年はもっと良い花を咲かせようと思って、またがんばってくれているのとちがうかなって。桜がぼくにそう教えてくれたような気がしたんだよ。散ったからと…

「サウスバウンド」 奥田英朗 (2007 単行本は2005) 角川文庫

「小学生にはうまく言えないけど、働かないことや、お金がないことや、出世しないことの言い訳にしている感じ。正義を振りかざせばみんな黙ると思ってる」(下 p-163) 主人公の成長譚を軸に、「真の活動家」として描かれる父親の英雄譚まで。面白い。過去の…

「f植物園の巣穴」 梨木香歩 (2009) 朝日新聞出版

何が起こっているのか。/ 普通なら次次と過ぎ去って戻ることのない時間が、まるでここには吹き溜まっているようであった。私はそれの「理由」を考えた。省みるに私の場合、それを、古い時間の細胞を、始末する手段が通常の人人のそれと違っていたのだろう。…

「きつねのはなし」 森見登美彦 (2006) 新潮社

ベビーカステラの甘い匂いが鼻先を流れた。そこに奈緒子は立っていた。ふわりと夢見るような目で、夜店を眺めていた。彼女のぶら下げたハンドバッグの中から、繰り返し、鈴の音のような着信音が響いていた。(きつねのはなし p-71) 骨董をやりとりするとい…

「鴨川ホルモー」万城目学(2009 単行本は2006) 角川文庫

なんというか、男の子のための小説だなーという気がすごくする(w。まぁそれはさておき、学生の街、京都が舞台のプロットはとても懐かしく、楽しい。先の本もそうだけれど、学生時代にこういう「キャンパスライフはひょっとしてこんなに楽しい」的な話に蒙を…

「四畳半神話体系」 森見登美彦 (2008 初版は2005年) 角川文庫

人から勧められて何年かぶりにまとめて小説を読むことになった。フィクションを読まなくなって久しかったわけだけれど、それは「作り物」につきあう気持ちの余裕がなかったから。物語られるとは「騙られる」ことでもあり、勧めてくれたことでしばし騙られる…

「生きかた名人 楽しい読書術」池内 紀 (2004) 集英社

もともと歌人や俳人、文人や画人に旅はつきものだ。「千里の道を歩み、万巻の書を読む」の約束事がある。読書を怠り、旅をおっくうがると、人間が卑しくなって、応じて作品も下落する。風雅のたしなみのための旅である。(メランコリー 若山牧水 p-182) 読…

「二列目の人生 隠れた異才達」池内 紀 (2008 初版は2003) 集英社文庫

中学生は、その齢ごろ特有の鋭敏な感覚で、目の前の人が「ただの人」でないことを感じ取っていたのではあるまいか。とにかく何かがちがう。全身にそんな雰囲気があった。大人たちの間ではめったにないもの、生活とまるきりかかわりがなく、しかし、それがな…

「短篇コレクションI (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第3集)」 池澤夏樹 (2010) 河出書房新社

この前フィクションを読んだのはいつのことだったか、思い出せない。単純に面白かったのは「小さな黒い箱」 これ絶対続きが読みたいぞ 「夜の海の旅」 仕事柄笑える。が、なかなかに深遠/物語へ引き込まれるのは「色、戒」 結末が残念なんだけど 「冬の犬」…

「ETF投資入門」 カン・チュンド (2010) 日経文庫

「日本人が知らなかったETF投資」 カン・チュンド (2008) 翔泳社 「日本破綻 『その日』に備える資産防衛術」 藤巻健史 (2010) 朝日新聞出版 三が日にお勉強。ろくに資産があるわけではない一般人にとっては、運用を考えている時間も働いて稼いだほうがよほ…

「大学破綻−合併、身売り、倒産の内幕」 諸星 裕 (2010) 角川oneテーマ21

当該の山形大の立松潔教授は、新聞の取材に対して、「学生はやり方を知らないだけ。教えればできる」のだと答えています。学生に足りないところがあり、社会に出すためには必要だと思われる教育は、いつ始めてもかまわないものです。それは「学力不足」とか…

「酒と本があれば、人生何とかやっていける」河谷史夫 (2010) 彩流社

「Hさんはいい人だ、悪いことのできる人ではない、もしHさんのしたことが法律に触れたのなら、その法律のほうが悪いのだ」。読み書きも満足にできなかったけれど、母は治安維持法の本質を直感していたのだと森は書いている。(肩書きと新聞記者 p-173) 紹介…

「人と出会う」岡崎満義 (2010) 岩波書店

「ここだけの話だがね」と、大内さんはまっすぐこちらに目を向けて、「それは小泉君の学問が深くないからです」と、強い声だった。「その人の学問が深ければ、弟子は黙っていたってできるものです」(大内兵衛−ブタ箱のドラマ p-86) 一流の人たちの謦咳に接…

「2020年、日本が破綻する日」小黒一正 (2010) 日経プレミアシリーズ

そして、いま、政府の借金は家計の貯蓄を食い潰しつつあり、もはや日本財政は破綻の危機に直面しつつある。もし、このまま財政・社会保障の再生が進まず、財政破綻という事態に至れば、「失われた30年、40年、50年」に陥ってしまう恐れがある。国民もこのよ…

「ウェブで学ぶ オープンエデュケーションと知の革命」梅田望夫/飯吉 透 (2010) ちくま新書

本当に、学ぶために「自分を閉じ込める」のが難しい時代になってきたような気がしますね。特にインターネットがごく日常的なものになってからは、学びに関してだけでなく、深く一つのことに関わることは、意識的な「選択と集中」をしないと、とてもできない…