「2020年、日本が破綻する日」小黒一正 (2010) 日経プレミアシリーズ

2020年、日本が破綻する日 日経プレミアシリーズ
そして、いま、政府の借金は家計の貯蓄を食い潰しつつあり、もはや日本財政は破綻の危機に直面しつつある。もし、このまま財政・社会保障の再生が進まず、財政破綻という事態に至れば、「失われた30年、40年、50年」に陥ってしまう恐れがある。国民もこのような日本の衰退を察知してか、日本全体を閉塞感が覆い、「行き着くところまで行くしかない」と、もはや「あきらめ」のムードも漂い始めている。だが、「あきらめ」からは何も生まれない。いまこそ日本は、アメリカ第35代大統領のジョン・F・ケネディの次のような言葉を思い出す必要があろう。「私たちが抱える問題は、人間が作り出したものだ。したがって、人間が解決できる。人間の理知と精神は、解決不能と思われることもしばしば解決してきた。またそうできると私は信じている。」(おわりに p-247)
 「気鋭の」という言葉がぴったりくるだろう。内容は精緻な分析や政策提言で斜め読んだが、こうした施策がきちんと実現できればこの国にも勝機があるのだろう。先進国の中でも「ちゃんとした」国は、緊縮財政策を通じて市場と戦い、自らの高齢化と新興国からの攻勢の中で生き残るすべを必死で模索しているように見える中、この国の年寄り政治家たちのハズし加減といったら…(以下略)。進むべき道は分かっていて、あとはそこへ踏み出すのか、足下の地面が崩れていくのをただ待つのか、それだけなのだろう。団塊世代リベラリストの多くが無能であることが白日の下に晒されたいま、旧来の年功序列方式でそれぞれのポジションに着いてしまった方々には引導を渡して、こうした若い人材の意見を通すべきだろう。ゆっくりとそうしたガラガラポンを進められるくらいには、この国の生命力がまだ残っていると思いたい。(2010年11月28日読了)