「人と出会う」岡崎満義 (2010) 岩波書店

人と出会う――一九六〇~八〇年代、一編集者の印象記
「ここだけの話だがね」と、大内さんはまっすぐこちらに目を向けて、「それは小泉君の学問が深くないからです」と、強い声だった。「その人の学問が深ければ、弟子は黙っていたってできるものです」(大内兵衛−ブタ箱のドラマ p-86)
一流の人たちの謦咳に接することは、最高の人生勉強だろう。島地勝彦氏もそうだけれど、編集者というのは面白い職業だと思う。本を読むことは、時間と空間を越えてその代替をある程度果たすだろうけれど、生身の人間の話を聞き、実際に知り合いになることにしくはない。一流に限らず、「ちゃんとした大人」と話をする面白さ、大切さを最近ようやく思うのは、自分もまた、なにがしか語るべきことを抱えるようになったからだろう。その点、歳を取るのも悪くないと思える。(2010年12月18日読了)