「サウスバウンド」 奥田英朗 (2007 単行本は2005) 角川文庫

サウスバウンド 上 (角川文庫 お 56-1)サウスバウンド 下 (角川文庫 お 56-2)
「小学生にはうまく言えないけど、働かないことや、お金がないことや、出世しないことの言い訳にしている感じ。正義を振りかざせばみんな黙ると思ってる」(下 p-163)
主人公の成長譚を軸に、「真の活動家」として描かれる父親の英雄譚まで。面白い。過去の紛争や闘争のOBたちは、それぞれに歳を取って存命のはずで、このように社会のそれぞれの場所でいまだに「活動」しているのかもしれない。メイワクな話である(w。老舗呉服店と下町と沖縄。そうした"パラレルワールド"を、大小の「活動家」たちは大胆に越境していく。「過去の人」だと思われていた人間が、逆にひとつの世界に汲々とする現代人の偏狭さを浮かび上がらせる、といったところか。(2011年3月18日読了)