「調理場という戦場 『コート・ドール』斉須政雄の仕事論」 斉須政雄 (2006 単行本は2002) 幻冬舎文庫

調理場という戦場―「コート・ドール」斉須政雄の仕事論 (幻冬舎文庫)
才能というもののいちばんのサポーターは、時間と生き方だと思う。才能だけでは駄目だと思うのは、「時間や生き方なしでは、やりたいことの最後までたどりつかない」と僕が感じているからなのです。仕事に合った生き方を持続できるかできないかが、才能の開花を決めるように思います。(東京 コート・ドール p-203)
料理人としてフランスに修行に行った、日本人としてはまだ初期の頃の人なのだろうと思う。言葉も十分に分からないままヨーロッパ人の中に放り込まれるとどうなるか、どういう気持ちになるか、自分のわずかな経験からも想像がつく。半分ノイローゼだったというのは、その通りだろう。そうした地を這うような経験から出てきた珠玉の言葉のオンパレード。仕事に生きるとはどういうことか、についての古典だろう。ちょうど、仕事と自分について見つめ直す必要があると感じていたタイミングで、こうした本に出会えたことに感心する。もし、自分に特殊な才能があるとするならば、それは唯一、困ったときには助けになる本が向こうからやってくる、ということである。(2012年1月9日読了)