「女たちよ」 伊丹十三 (2005 単行本は1968) 新潮文庫

女たちよ! (新潮文庫)
こんな安物をも飾り立てずにはおられない。それがかえって貧乏たらしいことに気づかない。これは安物だからガスがなくなったら捨ててしまうんだ、というところがクリケットの颯爽たるところじゃないの。なんにもわかっちゃいない、のです。(スパゲッティのおいしい召し上がり方 p-18)
有名なエッセイだそうである。(そのへんの事情はこのあたりにあった。)「才気煥発」という言葉がぴったりで、イケてるおっさんとはどういうものか、を見せてもらった感じ。60年代当時としてはかなりカッとんだ内容だったろう。中に、”自分はこんな老人になるかもしれない”といった記述があるのだが、本当の老人になる前に死んでしまった。その死因について、Wikipediaにはかなり衝撃的な話があって、なんだか社会的に葬り去られてしまったような感があるのはそういうことだったのかと妙に得心がいった。この天才をそんなふうにして潰してしまったのだとしたら、悲惨、かつ、惜しい話である。(2012年1月26日読了)