「イノベーションの知恵」 野中郁次郎 勝見明 (2010) 日経BP社

イノベーションの知恵
施設で行われる訓練指導は例えていえば、国語、数学、理科、社会、英語とあって、数学が苦手な人は数学を克服しなければ社会参加しては駄目という考えです。でも、それは管理する側の論理です。障害者の側に立てば、"数学抜きの私立文系"の生き残り方もある。一般ではそれで社会参加できるのに、障害者はできないところばかりにアプローチされる。拷問に近いと感じました。(第3章「考えて動く」ではなく「動きながら考え抜く」p-171)
いくつかの全く新しい(イノベーティブな)業態やら施設のありかたやらを創出した事例をつないで、どのような考えと行動が必要であるかを説く。それらは決して突拍子もないことではなくて、多かれ少なかれ仕事の中に垣間見られるものではないかと思う。そこに注力して、そこをキチンと伸ばしていけるかどうか、が問題。国全体に行き詰まり感が漂い、現状を打破しようとする動きがあればそれを後押しする雰囲気があるのは好機だろう。引用部分、障碍者だけでなく、「ごく普通の人々の伸ばしかた」という点からも示唆的。(2011年12月31日読了)