「西の魔女が死んだ」 梨木香歩 (2001、単行本は1994) 新潮文庫

西の魔女が死んだ (新潮文庫)
そして、そのとき、まいは確かに聞いたのだった。(p-191)
もはや古典の域に入る名作だろう。子供の頃、このようにものを考え、感じたのではなかったか、と思わせる。そしてその裏側で、幼いころはなつくものの、成長すると自分のもとを去っていく孫娘を見つめる祖母の、普遍的な寂しさと希望とを想像する。いつだったか祖父とふと顔を見合わせたとき、「あぁ、この人は私に未来を託して去っていくのだ」と思った記憶がある。自分の見ることのない未来を誰かに託すことが出来れば、すこし、心安らかでいられるかもしれない。しかし、それが身に染みて分かってあげられる頃にはもう、彼らはこの世にはいないのだ。(2011年6月13日読了)