「若者よマルクスを読もう 20歳代の模索と情熱」内田 樹・石川康宏 (2010) かもがわ出版

若者よ、マルクスを読もう (20歳代の模索と情熱)
疎外論の出発点が「自分の悲惨」ではなく、「他人の悲惨」に触れた経験だったということ。マルクスは「私たちを阻害された労働から解放せよ」と主張したわけではありません。「彼らを阻害された労働から解放するのは私たちの仕事だ」と主張したのです。この倫理性の高さゆえにマルクス主義は歴史の風雪に耐えて生き延びることができたのだとぼくは思っています。(内田 樹「経済学・哲学草稿」p-152)
マルクスといえば、「団結せよ」よりも、「重要なことは世界を変えることだ」の方が記憶に残る。久々にそういうフレーズに触れて、懐かしい感じ。著者たちのように若い頃にマルクスに親しんだ人々は、今の社会にはまだ多いのだろうが、彼らはそこから何を学んで今のような社会を作ってきたのか、と思わなくもない。団結したのはいいが、変えることはなかったのではなかろうか。マルクス復権というよりも、知的に背伸びをしよう、よく分からないものに齧り付いてみよう、それらは決してムダなことではないのだ、というメッセージを送ろうとする本。そのためには、なにより大人が背伸びをしていなくてはならないだろう。(2010年8月7日読了)