「百鬼園随筆」 内田百輭 (2002 初版本は1933) 新潮文庫

百鬼園随筆 (新潮文庫)
しかし、又他の、耶蘇教信者の友達が、こんな事を云った。実際、世渡りがうまいという事はひとつの天稟(てんびん)である。僕なんか到底実生活で成功する事は出来ない。努力すれば、却って反対の結果になる。実生活ばかりではない。うまいという事は信仰の上にもある。僕らよりも遅く信仰生活に入って、それで、うまく神に接し、神をとらえている者がいくらもある。僕は、神を信じる事すらも、へまだ。(地獄の門 p-184)
ふざけたりとぼけたりしているようで、じっとひとの生の深みを突く、というところ。大叔父にあたる人が8歳年下で同じように陸軍大学校の教授だったそうだから、その頃の授業風景などはこの本にあるようだったかと思うと面白い。(2012年3月20日読了)