「赤めだか」 立川談春 (2008) 扶桑社

赤めだか
聴いていて鳥肌が立った。弟子の祝いの会なのだ、手慣れた十八番の根多で観客を爆笑させることなど簡単だろうに、談志(イエモト)はそれをしなかった。落語と向き合ってゆく姿勢、喉の良くない談志が、勿論圓生とは違うアプローチでだが、唄っている。噺家にとって歌舞音曲の大事さ、それらすべてを談春(オレ)達に伝えようとしている。ドキュメントで見せてくれている。これが立川談志なのだ。後年、真打昇進をかけ談志の前で演った根多は、談春志らくも、包丁だった。(生涯一度の寿限無と五万円の大勝負 p-221)
本好きの母親から薦められたもの。噺家はいかに弟子を育てるか、という視点でつい読んでしまうが、立川談志がある面でとても優しい人であったらしいことを知る。晩年の(すなわち最近の若い)直弟子のダメさ加減も分かる気がして苦笑。ブームがあったり斜陽だったりして業界が浮き沈んでも、芸に真剣な人間には関係がない。その強さを持続するのも、才能の不可欠な部分だろう。(2012年3月3日読了)