「センセイの鞄」 川上弘美 (2001) 平凡社

センセイの鞄
時刻表を見ると、最終のバスはすでに出てしまっていた。ますます心ぼそくなった。足ぶみをした。体が、あたたまらない。こういうとき、大人ならば、どうやってあたたまればいいのかを、知っている。今わたしは子供なので、あたたまりかたが、わからない。(お正月 p-94)
珍しく単行本で持っていて、2003年の奥付がある。それからずっと読まずにほったらかしになっていたので、すっかり紙が黄ばんでしまっている。川上弘美は好きでエッセイはよく読んでいたから、いちど小説も読んでやろうと思ったのだろう。個人的には厳しい時期だったのだが、何を考えていたのか、いまではもうよく思い出せない。「ツキコさん」が激かわいらしいし、その「ぼわぼわとした」感じがなんとも好ましい。「時間と仲よくできな」くて、大人になり損ねてしまうところを自分と重ねてしまう。(2011年8月23日読了)