「夜間飛行」 サン・テグジュペリ 二木麻里訳 (2010 原著初版は1931) 光文社古典新訳文庫

夜間飛行 (光文社古典新訳文庫)
生死のはざまの不思議な異界にたどりついてしまったとファビアンは思った。自分の両手も、着ているものも、飛行機の翼も、何もかもが光り輝いている。しかもその光は上空からではなく下のほうから、周囲に積もっている白い雲から射してきていた。(p-107)
「航空小説」という軽やかな響きに反し、人間の生きる意味はどこにあるかを問う。「小市民的な」幸せよりも、「永遠につながる」営みにこそ、という考え方には共感するが、そうした「大義に生きる」ことは避けられて久しいだろう。80年も経ってるわけだし。確かに夜間飛行は当時、いまよりもはるかに危険な行為だったろうし、ファビアンの辿る運命の描写がとても美しく、哀しい。(2011年7月31日読了)