「カイシャ維新」 冨山和彦 (2010) 朝日新聞出版

カイシャ維新 変革期の資本主義の教科書
やはり企業経営の根本哲学は自助自立である。福沢諭吉翁の名言、「一身独立して一国独立する」は、現代においても全く輝きを失わず生きている。いや、平和で豊かな時代が長く続き、優しいゆりかごののような家庭環境で大事に育てられ、ゆとりを与えてくれる優しい教育環境、一生守ってくれるカイシャの中で、私たちはむしろ他者依存的になっているのではないか。自由と競争の中で、自らの食い扶持を自ら稼ぐのが、自由経済の中での企業経営の基本である。(第6章 JAL破綻から学ぶべきこと p-244)
会社経営者というのはこれほど理路整然かつ明解に世界経済や社会を語れるものなのか、ということに驚く。語られる資本主義の現状分析や未来などはeconomist誌で議論されているようなこととも完全に通じていて、当然といえば当然だが世界標準。その上で、日本の「カイシャ」はこれからどうなるのか、という議論は門外漢にも面白く読めた。歴史や哲学への洞察も効いていて、「リーダーはかくあるべし」というひとつの姿を示していると思う。やはりこの国では経済人が最も優秀であるようだ。見習わねば。(2011年7月24日読了)