「自由に生きるとはどういうことか 戦後日本社会論」 橋本 努 (2007) ちくま新書

自由に生きるとはどういうことか―戦後日本社会編 (ちくま新書)
創造を求める人々は、わざわざ大きな美術館やコンサートホールに出向いて、すでに名声を得たアーティスト達の作品を鑑賞することを好まない。彼らはむしろ、「創造の過程」を目の当たりにするような、生き生きとした芸術体験を求めている。たとえば、まだ無名の俳優たちが演じる小劇場や、前衛画家の作品を展示した小さなアートギャラリーに通ったり、あるいは、ワークショップやイベントに参加して芸術家達と交流するといった、創造性を養うためのコミュニケーションを求めている。(第6章 最高のトレッキングシューズを買え p-230)
戦後の日本社会の「自由」概念の変遷を「代表的な」文化的事象をとりあげて跡づけていくという趣向だが、それがいわば時代精神だとする「代表」がいまひとつピンと来ない。「あしたのジョー」とか「エヴァンゲリオン」とか、よく知らないからかもしれないけれど、ほんとかな?みたいな。そんな話だったのか、というのは発見だったが。しかし、「我々は何を自由と考えてきたか」という問題をいま問うことは魅力的で、いわゆるCreative classはその現代的なあり方なのだとする部分は頷ける。(2010年9月18日読了)