「現代日本の転機 「自由」と「安定」のジレンマ」高原基彰 (2009) NHKブックス

現代日本の転機 「自由」と「安定」のジレンマ (NHKブックス)
つい一〜二年前まで、「格差」が包括的な政治的議題になったことは、なかった。それまでずっと論じられていたのは、政党政治においてもメディア・論断においても、外交・安全保障や靖国憲法再軍備ばかりだったことは、忘れられるべきでない。(第四章 日本型新自由主義の展開 p-223)
なんだか必要以上に難しい気がしてよく分からず。70年代以降、日本では例外的に「安定」な社会が延命され、人々もそれだけを前提として行動し、数十年ものあいだ、それ以外のあり方に目を向け、考えようとしてこなかった。近年急激に「安定」が失われたために、いまはみな途方に暮れ、「分裂した主体が互いを罵りあう(p-257)」ような、閉塞的な状況に陥ってしまっている、というような感じか。世代間格差の問題などはもうずっと前から分かっていたことで、ただ、それについて誰も何もしてこなかったし、何も考えてこなかったんだな、ということが分かる。結局は、自分の利益を守る以上のことについてはみな怠惰で、「それ以上」の仕事をしようとはしなかった、ということだろう。そういう「お国柄」になっているという自己認識がないのが、いちばん危ういだろう。(2010年9月5日読了)