「世代間格差ってなんだ 若者はなぜ損をするのか?」城 繁幸 小黒一正 高橋亮平 (2010) PHP新書

世代間格差ってなんだ (PHP新書 678)
二〇一〇年の時点では、三〇代までの投票率が八十五.四%あれば、六〇代以上と同数の世代別投票数を維持できる。だが二〇一五年には、三〇代までの有権者全員が投票しても、高齢者の投票者数を下回ってしまうのである。(第3章 [政治参加]ユース・デモクラシーの構築 p-150)
「失われた20年」で我々が失ってきたものが、この本には示されていると思う。この国はそのあいだ、過去の成功に胡座をかいて「社会を改良すること」を怠ってきたのだろうし、それは要するに、いま引退しようとしている世代が集団でその仕事をサボってきた、ということに他ならないだろう。その負の遺産はいまや社会の隅々にまでおよんでいて、若い世代はそれを再び現行の世界標準へと引き上げるために、こうしてあらゆる場面で諸外国に学び、創意工夫し、カイゼンし、努力しなくてはならない、という構図ではないかと思う。教育についての議論が散漫な印象を与えるが、その他の議論は明解で説得的。30代以下の人間は奮起して、社会に対して正当な発言権を主張し、旧世代に丁重に引導を渡して、次の世代のために社会をより良くするという責務を果たすべきだろう。「国を愛するとは、起立して君が代を歌うことである」といったバカな議論に終始していた(ちょうどその世代の)人たちよりも、彼らの方がよほどこの国のためを思っていると言えないだろうか。(2010年7月16日読了)