「『空気』の研究」山本七平 (1983 単行本は1977) 文春文庫

「空気」の研究 (文春文庫 (306‐3))
みなはそうしているし、自分もそうすると思う。ただし、私はそれを絶対に言葉にしない。日本の道徳は、現に自分が行っていることの規範を言葉にすることを禁じており、それを口にすれば、たとえそれが事実でも、”口にしたということが不道徳行為”と見なされる。従ってそれを絶対に口にしてはいけない。これが日本の道徳である。(「空気」の研究 p-14)
上記は道徳教育について語ったという内容。慧眼。教えるなら確かにこっちであるべきだろう。この社会のさまざまな場面で立ち上がる「空気」を正面から論じようとした、名著とされる本らしいが、それほど刮目させられることは書かれていないように思う。結局は「それがなんであるか」を認識した上で、「水を差す」しかないということのようだ。明治までは我々はもっと上手に水を差せたとある(p-87)が、この「空気」による支配が日本人の抜きがたい属性なのか、近代以降の一過性のものに過ぎないのかは、結構重要な気がする。(2010年3月23日読了)