「新しい労働社会―雇用システムの再構築へ」濱口桂一郎 (2009) 岩波書店

新しい労働社会―雇用システムの再構築へ (岩波新書)
ただ、そのように見なすためには、大学教育全体の職業的レリバンスが高まる必要があります。現実の大学教育は、その大学で身に付けた職業能力が役に立つから学生の就職に有利なのか、それとも大学入試という素材の選抜機能がもっぱら信頼されているがゆえに学生の就職に有利なのか、疑わしいところがあります。(第3章 賃金と社会保障のベストミックス p-148)
疑う余地はないだろう(w。ほとんど学術書のような筆致で、細かく論を追う根気がないので拾い読む。一歩引いた地点からの解説は、「同一労働同一賃金」といったよく聞く主張をそのデメリットも含めて政策全体の中で理解する上で有用。「正社員の過重責任の緩和が必要」、「生活給制でメリットを享受したのは政府」、「初期の成果主義導入の本音はコストカット」、「職務給の推進と社会保障給付の拡大はセットで」など、説得力のある議論が展開される。「過半数代表」とか「断交」とか、身近に起こってはいたけれど、ここまでのパースペクティブを持って議論していたとは思えない。所詮は既得権者がゴネているにすぎなかったのだろう。愚かなことである。(2010年3月19読了)