「ビヨンド・エジソン 十二人の博士が見つめる未来」 最相葉月 (2009) ポプラ社

ビヨンド・エジソン
十二人の博士は、幼いころに自然という謎物語を読もうと志し、目下、読み進めつつある探偵たちだ。一人だけでは読了できないのかもしれない。自分が読んでいるページは、ずいぶん前に、いまや偉人と呼ばれる先人たちがすでに読み終えていて、ふと横を見れば、次のページをめくることができずに頭を抱えている探偵たちが列をなしている状態かもしれない。それでもなお、彼らは、先人を超えてさらにその先を読み進めようと心に決めた。その試行錯誤の日々は、尊い。(はじめに 自然という書物を読む人々 p-7)
科学者を、奉るのでも変わり者扱いするのでもなく、一つの物事に人生をかけて打ち込む、一人の人間として描く。そうした人たちへの尊敬と、愛情がにじむ。自然を識ること、人の役に立つ新しい発見を生み出そうとすることが、単に「勉強が出来ること」の延長上ではなしに社会的に尊重される、そういう成熟した社会に、そろそろなってもらいたい。この国に近代自然科学が移植されて130年である。(2010年2月21日読了)