「日本の外交 明治維新から現代まで」 入江 昭 (1966) 中公新書

日本の外交―明治維新から現代まで (中公新書 (113))
若い世代の歴史家その他の知識人、さらには政界、実業界などに身をおく人たちが、一方的なドグマや陳腐な説明に満足せずに、自らの力で明治百年の足跡を考えてみる必要がある。明治時代、大正時代に育った人たちの歴史観を、若い世代がそのまま受け入れなければならないということはないし、むしろ現存する多くの固定観念を超越してこそ、民族としての精神的発展もありうるであろう。(はしがき p-iv)
60年代には「民族としての精神的発展」といったようなことが考えられていたのだろうか。いまはどうか? 世界史の中での日本の「立ち位置」や、その振る舞いが諸外国にどう受け止められたか、といった「外からの視点」がよく解説されていて、歴史を知らない人間には勉強になる。その時々の国際情勢という「その場限り」の条件に決定づけられるとか、世界的な外交思想というものがあって、帝国主義的な考え方から道徳主義的な考え方への歴史的な変遷があるとか、「黄渦論」や「東洋と西洋の対立」などいう「流行」があるとか、そもそも外交というものがどういうものなのかを分からせてくれる。「昔の人は偉かった史観」を越えて、いまを考えるためには、そういうルールをまず頭に入れておきたい。現代の外交思想とは何か、それに日本がどう応じるのか。国土防衛や国益はもちろん第一だろうが、それだけでは国として「KY」なのだろうと思う。(2010年2月13日読了)