「近頃の若者はなぜダメなのか」 原田曜平 (2010) 光文社新書

近頃の若者はなぜダメなのか 携帯世代と「新村社会」 (光文社新書)
こうした環境下、若者は24時間いつでもどこでも井戸端会議を繰り広げるようになりました。戦後、核家族化や都市圏への人口の流入、地域共同体の衰退、個人化・多様化が進行しましたが、ケータイが若者たちをつないだことで、こうした戦後の日本人の動きとはまったく逆行するように、噂話や陰口が多く、出る杭は打たれ、他人の顔色をうかがい、空気を読むことが掟とされる、かつて日本にあった村社会が若者の間で復活したのです。(第7章 近頃の若者をなぜダメだと思ってしまうのか? p-246)
この本がなかなか好感を持って受け入れられているようなのは、「近頃の若者」特有の苦労や、彼らのコミュニケーションのあり方のポジティブな面に光を当てているからだろう。確かに、ごく若い頃から携帯を持てば人間関係はかなり違ったものになるだろうし、それは人と人とをつなげようとする幾層もの技術の波が、現在進行形で社会全体に広がりつつあることの正確な反映に過ぎないのかもしれない。ただ、同じ「若者」でも二極分解していることは確かで、芋づる式にツテをたどって取材対象を募れば、どうしてもなにがしか高い能力を持ってつながりあっているアッパークラスに焦点を当てることになるのではないかと思う。「いやぁ、”その他大勢”はもっと「ダメ」なんじゃないの?」と思うことも。(2010年2月7日読了)