日本の子どもの自尊感情はなぜ低いのか 古荘純一 (2009) 光文社新書

日本の子どもの自尊感情はなぜ低いのか (光文社新書)
大人の知性や社会性を測って各国間で競わせる尺度などはありません。仮に作成し国際調査を企画したとしても、世界の国から協力を得ることは難しいでしょう。ところが子どもたちであれば、同じ尺度で比較することが容認される。もちろんそれが子どもたちの未来に希望を与えるものであればよいのですが、大人の不安のはけ口にされた子どもの立場も考える必要があります。(第8章 子どもとどう関わったらよいのか? p-240)
上記はPISAについてのコメント。ごもっとも(w。「自尊感情」をテーマとした初の大規模な、しかしまだ始まったばかりの調査の結果を紹介して、あとは著者の考えを縷々述べるといった感じの本。本の端々に著者の子どもへの愛情があふれる。日本の子どもの自尊感情が突出して低いとされることは確かに問題に思えるし、実際に大学生を見ていても低そうである。なにごとにも一生懸命にならない彼らをどのように扱ったらいいのかに頭を抱えるわけだが、スパルタ式に追い詰める前に、こうした「低自尊感情」といった理由がないのか考えてみるべきかもしれない。一方で、自らを振り返っても、そうした自尊感情の低さが「自らを高めたい」と願う向上心の源泉なのではないのか、とも思える。あるいは逆に、それは「本来自分はもっと高く評価されるべきだ」という自尊感情の高さなのだろうか。ともあれ、この国の若者の原風景のようなものが何か完全に塗り変わってしまっていることは間違いないように思う。(2010年1月15日読了)