外国語学習の科学 白井恭弘 (2008) 岩波新書

外国語学習の科学―第二言語習得論とは何か (岩波新書)
なぜこの研究が重要かというと、もし、臨界期の原因が脳の構造によって決まっているのなら、同じ影響が全人類にあるはずであって、アジア系だけに年齢の影響があって、ヨーロッパ系にはない、という現象とはしっくりこない。(第2章 なぜ子どもはことばが習得できるのか p-40)
子どもの頃のある時期までに第二言語を学ばないと習得に支障をきたす、という臨界期の理論が、いまだ限られた実験に基づく一仮説に過ぎないことを指摘。なんだその程度かよ、という印象。しかし、センター試験へのリスニング導入や小学校からの英語教育には総じて肯定的である。もちろんそれは「方法」としては正しいかもしれないが、反対論者がしばしば主張するように、「そもそもこの国で全員がそうする必要があるのか」というところが問題だろう。いやそれは(次に読む本にあるように)、その必要がない国であることをこそ問題にしなければならないのかもしれないが。なるほど、と思わせるところも多いが、画期的な方法論が(特に英語学習法については)あるわけではなく、経験則がだいたい正しいこと、その方向性を確認できる、といった程度である。そもそもこの「第二言語習得論」と呼ばれる学問分野が、いまだにその程度しか進展していないことに驚く。これこそ日本が頑張れる分野ではないのか? もっと文系の人たちには頑張ってもらわんと(w。(2009年12月27日読了)