迫るアジア どうする日本の研究者 理系白書3 毎日新聞科学情報部(2009)講談社

迫るアジア どうする日本の研究者 理系白書3 (講談社文庫)
石井正道客員研究員は、「イノベーションの多くは、技術者が自分の専門と専門外の知識を融合させて生み出している。自発的に他分野に飛び込んで学習する能力のある人材と、長期間自由に試行錯誤が行える環境をそろえることで、画期的なイノベーションが生まれる確率を増やすことができる」と分析している。
(これからの日本のものづくり p-293)

この本を含め、イノベーションは「技術革新」と訳されているのだけれど、先のドラッカーの定義に従えば、そうは訳せないはず。いつも気になるのは、「イノベーションは意図的に起こせる」という前提で論じられることである。「それまで考えつかなかったような革新的なことを、意図的に起こす」というのでは、論理が破綻している。意図的には起こせないほど革新的なことであるからこそ、「長時間の自由な試行錯誤」が必要なのであり、単なる技術革新に留まらない「システム」であるからこそ、分野をまたぐ必然性が生まれるのだと思う。新しいシステムを創り出そうとすれば、分野のカベ、縄張り意識のカベを踏み破らざるを得ないということは、イノベーティブなことをやろうとする人なら誰でも経験することではないだろうか。
(2009年3月9日読了)